南天の夜空に輝く“スペアタイヤ星雲” ジェミニ南望遠鏡で撮影
【▲ ジェミニ南望遠鏡で撮影した惑星状星雲「IC 5148」(Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA; Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), J. Miller (Gemini Observatory/NSF’s NOIRLab), M. Rodriguez (Gemini Observatory/NSF’s NOIRLab), & M. Zamani (NSF’s NOIRLab))】

こちらは「つる座(鶴座)」の方向約3000光年先の惑星状星雲「IC 5148」です。小型の望遠鏡では中心に星が輝くリング状の天体に見えることから、海外では「Spare Tyre Nebula(スペアタイヤ星雲)」とも呼ばれているといいます。リングの詳細な構造を捉えることができる大型の望遠鏡で撮影されたIC 5148は、暗闇に咲いた幻想的な花のようにも見えます。

【▲ ジェミニ南望遠鏡で撮影した惑星状星雲「IC 5148」(Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA; Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), J. Miller (Gemini Observatory/NSF’s NOIRLab), M. Rodriguez (Gemini Observatory/NSF’s NOIRLab), & M. Zamani (NSF’s NOIRLab))】
【▲ ジェミニ南望遠鏡で撮影した惑星状星雲「IC 5148」(Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA; Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), J. Miller (Gemini Observatory/NSF’s NOIRLab), M. Rodriguez (Gemini Observatory/NSF’s NOIRLab), & M. Zamani (NSF’s NOIRLab))】

惑星状星雲とは、超新星爆発を起こさない比較的軽い恒星(質量は太陽の8倍以下)が進化する過程で形成されると考えられている天体です。太陽のような恒星が主系列星から赤色巨星に進化すると、外層から周囲へとガスや塵が放出されるようになります。やがてガスを失った星が赤色巨星から白色矮星へと移り変わる段階(中心星)になると、放出されたガスが中心星から放射された紫外線によって電離して光を放ち、惑星状星雲として観測されるようになるとされています。

米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)によると、IC 5148の膨張速度は毎時約18万km(毎秒約50km)で、既知の惑星状星雲のなかでも膨張速度が最も速いものの一つだといいます。星雲の中心で輝いているのは白色矮星であり、かつては太陽と同じくらいの質量の恒星だったと推定されています。太陽が恒星としての寿命を終える数十億年後の太陽系にも、このような惑星状星雲が形成されることになるのかもしれません。

冒頭の画像はチリのセロ・パチョンにあるジェミニ天文台の「ジェミニ南望遠鏡」を使って撮影されたもので、NOIRLabの“今週の画像”として2023年11月1日付で公開されています。

 

Source

  • NOIRLab - Blooming of the Spare Tyre Nebula
  • ESO - From Cosmic Spare Tyre to Ethereal Blossom

文/sorae編集部