マリナー10、水星フライバイから40年――史上初、水星に接近

Mariner-10
Image credit: NASA
 今から40年前の1974年3月29日、米航空宇宙局(NASA)の惑星探査機マリナー10(Mariner 10)が、水星をフライバイした。水星に探査機が訪れたのはこの時が初めてで、地上から水星を観測することは非常に難しく、長い間水星の本当の姿は分からなかったが、マリナー10の観測により、その表面が地球の月によく似た、クレーターに覆われた惑星であることが明らかになった。
 マリナー10は、マリナー計画の10機目となる探査機で、水星と金星の環境、大気、表面や地中の特性を観測すること、惑星探査機の運用技術の取得、そしてある惑星を使いスウィング・バイを行い、他の惑星へ向かう、航行技術の実証を目的としていた。打ち上げ時の質量は502kgで、2台のカメラや、紫外線やプラズマ、荷電粒子、磁場などを観測する装置を搭載していた。
 マリナー10は1973年11月3日、 アトラスSLV-3D・セントールD1Aロケットに載せられ、フロリダ州のケープ・カナベラル空軍ステーションから打ち上げられた。25分後に太陽を周回する軌道に乗り、金星へ向け飛行を始めた。しかし静電気アナライザーと呼ばれる観測機器のカバーが取れず、使用することができなくなった。またテレビカメラのヒーターも故障し、機体が太陽に近づいて暖まるまで、使用が中止された。
 打ち上げから10日後にはスラスターを噴射し、軌道修正が行われたが、直後に機体から塗装が剥がれ始め、カメラに写る恒星の位置から自分の姿勢を判断するための装置(スタートラッカー)が正常に動かなくなってしまった。その後自動で復旧はするが、この問題は運用終了まで付きまとうことになる。また搭載されているコンピューターはときどきリセットがかかる問題を抱えており、さらに高利得アンテナも正常に働かなかった。
 1974年1月21日にはさらに軌道修正が行われ、また同時に、観測機器の校正も兼ねて、当時地球に接近していたコホーテク彗星の観測も行われた。
 1974年2月5日、金星をスウィング・バイし、その航路を水星へと向けた。目的の惑星へ赴くために、他の惑星をスウィング・バイしたことはこれが初めてであった。
 水星への飛行中、前述のスタートラッカーの問題から姿勢制御用の燃料を使い果たしてしまう。しかし運用チームは、太陽電池パドルに当たる太陽光の圧力を利用して姿勢を制御する運用を編み出し、これを乗り切った。
 そして1974年3月29日20時47分(協定世界時)、マリナー10は水星の地表から約703kmまで接近した。また同年9月21日と1975年3月16日にも水星をフライバイ、特に75年の接近では約327kmにまで接近した。この3回のフライバイの中で2,800枚もの写真が撮影され、水星の地表面の約4割を網羅した。また地表面にヘリウムを主成分とする、希薄な大気があることを発見、また磁場や磁気圏が存在することも明らかになった。
 その後、1975年3月24日に発信機のスイッチが切られ、マリナー10はその生涯を終えた。現在は人工惑星となり、太陽の周りを回り続けている。
 マリナー10はマリナー計画にとって7機目の成功となり、そして最後の探査機となった。また同計画で培われた技術はヴォイジャー計画に受け継がれ、かの有名な大成功へと結びつく。
 水星へはその後長い間、探査機が訪れることはなかったが、2004年にNASAの探査機メッセンジャーが打ち上げられ、2008年に水星をフライバイし観測を実施、また2011年には水星を周回する軌道に入り、現在も観測を続けている。また2016年には、欧州宇宙機関(ESA)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の共同ミッションであるベピ・コロンボが打ち上げられる予定だ。
写真=NASA。
■NASA – NSSDC – Spacecraft – Details
http://nssdc.gsfc.nasa.gov/nmc/spacecraftDisplay.do?id=1973-085A

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