国際宇宙ステーション(ISS)に補給する物資を搭載した「こうのとり」5号機が、8月24日19時29分、ISSに到着した。作業は問題なくすべて順調に進み、予定よりも20分ほど早く到着した。
「こうのとり」5号機は今月19日に、H-IIBロケットによって打ち上げられた。ロケットは順調に飛行し、打ち上げから15分後に「こうのとり」が分離され、予定通りの軌道に入った。その後、計4回に分けた軌道変更を行い、徐々にISSに接近した。
そして2015年8月24日19時29分(日本時間、以下同)、ISSに滞在している油井亀美也宇宙飛行士が操作するロボット・アームによって「こうのとり」5号機がキャプチャー(把持)され、ISSに到着した。
当初、キャプチャーは19時55分ごろに予定されていたが、大幅に前倒しされることになった。その理由について、JAXA有人宇宙技術部門長・理事の浜崎敬(はまざき・たかし)さんは、「当初の予定には、問題などが発生したときに備え、あらかじめマージン(余裕)を設けていましたが、作業が非常に順調に進んだことから、JAXAとNASA、宇宙飛行士らの判断で、予定を早めることにしました」と語った。
ヒューストンにある米航空宇宙局(NASA)のジョンスン宇宙センターでは、若田光一宇宙飛行士が通信担当(CAPCOM、キャプコム)を務め、油井飛行士をサポートした。またJAXA筑波宇宙センター(茨城県つくば市)にあるHTV運用管制室では、HTV5リードフライトディレクタの松浦真弓さんが「こうのとり」5号機の運用を指揮を執った。
浜崎さんはまた「ロボット・アームを操作した油井宇宙飛行士、キャプコムの若田宇宙飛行士、そして地上のリードフライトディレクタの松浦さんと、今回初めて、運用のすべてに日本人が関わるミッションになりました。こうして成功したことで、『チーム・ジャパン』のチーム・ワークの良さを世界に示せたと思います。特に最近、米露の補給船の失敗が相次いでおり、日本の力でその連鎖を断ち切れたことを、大変誇りに思います」と語った。
またキャプチャー後、ロボット・アームの操作を担当した油井宇宙飛行士は次のように述べた。
「どうもありがとうございました。おかげさまでしっかりと仕事が出来て、キャプチャすることが出来ました。これも日本の方々が一生懸命働いたというところがあると思います。私もここで仕事が出来て、日本人であることを誇りに思いますし、チームを誇りに思います。私も宇宙開発の中では一つの小さな歯車ですけれども、自分の仕事をしっかりして、一等星並みに輝けたかなと、この瞬間だけは思います。これからもご支援よろしくお願いします。どうもありがとうございました」。
また若田宇宙飛行士は次のように述べている。
「日本の物づくりの技術、そして宇宙と地球の国際連合チーム全員の情熱と、素晴らしいチームワークの力で、こうのとりが無事に到着したことを嬉しく思います。油井さん素晴らしいキャプチャでした。おめでとうございます」。
「こうのとり」(HTV)は、ISSに水や食料品、生活用品、そして実験機器やISSの予備部品などの物資を輸送することを目的として開発された無人の補給船である。
打ち上げ時の質量は約16.5トンで、最大で約6トンの物資を搭載することが可能となっている。今回の5号機には合計で5.5トンの物資が搭載されており、そのおよそ3分の1が飲料水や食料品、もう3分の1がISSで使われている部品の補給品、そして残りの3分の1を実験機器が占めている。
「こうのとり」は、1気圧に保たれた「与圧部」と、宇宙空間に曝け出された「非与圧部」の、2か所の異なる貨物の搭載区画を持っており、与圧部には飲料水や食料品、日用品や実験パレットを、非与圧部にはISSの船外に設置する、部品や、大型の実験機器や観測機器などを搭載することできるようになっている。
現在「こうのとり」5号機は、ロボット・アームの先端で捕まえられただけの状態にある。このあと、ロボット・アームを動かして機体を移動させ、25日0時30分ごろに、ISSの「ハーモニー」モジュールに固定金具を使って取り付ける作業が行われる。続いて同日3時ごろに、「こうのとり」の与圧キャリアにある電圧変電器(DDCU)が起動され、それをもって結合完了となる。与圧キャリア内への宇宙飛行士の入室は、25日中に予定されている。
また同じく25日には、非与圧部に搭載されている暴露パレットが引き出され、そこに搭載されている実験機器などをISSに設置する作業も予定されている。
物資の搬出作業などが行われた後は、ISSで発生したゴミや、不要になった実験機器などを搭載し、9月下旬にISSから離脱。その翌日に大気圏に再突入して燃え尽き、ミッションを終える予定となっている。