宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月5日、金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入に向けた、軌道修正制御に成功したと発表した。これで残る関門は、8月下旬の近日点通過と、そして12月7日の金星周回軌道への投入となった。

「あかつき」は2010年12月7日、金星をまわる軌道への投入に挑んだが故障により失敗。その後、太陽のまわりを回りながら、再挑戦の機会を伺っていた。そして2015年2月に再挑戦を行う目処が立ったものの、そのまま軌道では、再投入後の近金点(軌道上で最も金星に近づく点)が、太陽の影響によって下がり、探査機が早々に金星へ落下する可能性があった。そこで、これを回避し、また再投入後の軌道を、科学観測にとって有利な形にするため、7月17日、24日、そして31日の3回にわけ、軌道修正が実施された。

そして、8月2日までに取得した、探査機の状態を示すデータの解析結果により、8月4日17時30分(日本標準時)をもって、軌道修正制御が計画通りに実施されたことが確認できたという。

これで、12月の金星到着までに残された関門はあと一つ、8月下旬の近日点通過だけとなった。「あかつき」は現在、当初の想定よりも太陽に近付く軌道に乗っており、太陽の近くを通過するたびに、設計時の想定を超える熱にさらされる状態にある。「あかつき」はこれまで8回、近日点通過を経験しており、そのたびに耐えてはきているものの、各機器への熱の負荷は大きく、また探査機の断熱材の劣化も進んでおり、探査機の温度の上昇に拍車をかけている。

近日点通過は避けることができず、また地上からの操作でどうにかなるものでもないため、温度計などを確認しながら、無事に通過することを見守ることしかできない。

また今回の軌道修正は、金星周回軌道への投入時に使用する、スラスター(小型のロケット・エンジン)の性能確認の意味もあった。

2010年12月7日に軌道投入に失敗した際、探査機の主推進エンジンが壊れた可能性があるため、今回の軌道投入では、本来探査機の姿勢を制御するために使う、小型のスラスターを使うことになっている。

軌道投入では、探査機の高利得アンテナがある側(トップ側)にあるスラスター4基が用いられることになっているが、これまでに長時間の噴射が行われた実績がないので、その性能や状態を把握するための試験もかねて、今回の軌道修正でトップ側スラスターが用いられた。

トップ側のスラスターの詳しい性能や状態については、現在まだ解析中だという。

ちなみに「あかつき」は、今回までに3回の軌道修正を実施しているが、その際には主推進エンジンがある側(ボトム側)に装備されているスラスター4基が使われた。

今後、軌道を微調整するために、短時間のスラスター噴射が行われる可能性はあるものの、計画されている大きな軌道修正は、今回の4回目で最後となる。