米航空宇宙局(NASA)は7月15日夕方(現地時間)、記者会見において、探査機「ニュー・ホライズンズ」が13日に撮影した、冥王星の衛星「カロン」の、これまでで最も解像度の高い写真を公開した。

これはカロンから46万6000km離れた場所から撮影されたもので、地形の凹凸がわかるほど高解像度の写真が得られたのは史上初のこととなる。

中央の少し下を横に走る、谷や崖のように見える部分は、おそらくカロンの地殻が広がって割れたことで形成されたと考えられるという。長さは約1000kmほどと推定されている。

また右上には渓谷のような地形も見え、その深さは7kmから9kmほどだという。

科学者たちによると、カロンの地表にクレーターが想定よりも少ないことが驚きだという。特に、写真の下にあたる部分は太陽の光が斜めに差し込んでいるため、クレーターが見つけやすくなっているにもかかわらず、まばらにしかなく、また巨大なクレーターも確認できない。カロンによく似た大きさで、やはり氷が主体となっている土星の衛星「テティス」や「ディオネ」には、大小さまざまな数多くのクレーターがあり、それと比べると、その違いがよりはっきりわかる。

NASAによると、これはおそらく、ごく最近に地質活動が起こり、新しい地面が現れたことで、クレーターが消えたと考えられるという。

カロンの北極域には、これまでの観測でも見えていた黒い領域が、より精細に写っている。NASAによると、この部分は黒い鉱物があると考えられるという。

また非公式ながら、この部分は「モルドール」(Mordor)と名付けられたという。モルドールとは、J・R・R・トールキンの『指輪物語』に登場する国の名前から採られている。モルドールは冥王サウロンの王国で、シンダール語で「黒の国」という意味を持つ。"冥王"星の衛星にある"黒い"領域にとってふさわしい名前となっている。

今回公開された写真は本来、ファイル・サイズが大きなもので、地球へ送信しやすいようにニュー・ホライズンズによって圧縮がかけられたため、いくつかのディテールが失われているという。無圧縮のデータは探査機内に残っており、今後時間をかけてダウンロードされる予定となっている。

また、別の距離、角度から撮影された画像もあるため、今後の分析によって、渓谷やクレーター、そしてモルドールの、より鮮明な姿が明らかになることが期待される。

 

■Charon’s Surprising Youthful and Varied Terrain | NASA
http://www.nasa.gov/image-feature/charon-s-surprising-youthful-and-varied-terrain