ドイツ航空宇宙センター(DLR)は7月10日、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸した探査機「フィラエ」との通信に、6月24日以来初めて成功したと発表した。また、彗星核の内部構造を探る「CONSERT」と呼ばれる観測機器による科学データの受信にも成功したという。

フィラエは昨年11月にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星への着陸に成功し、探査を終えた後、バッテリー切れにより活動を停止していた。ところが7か月後の今年6月13日に再起動に成功し、同彗星のまわりを回っている探査機「ロゼッタ」を経由して、不安定ながら通信も送られてきた。しかし6月24日を最後に通信が途絶え、7月5日にCONSERTの電源を入れるコマンドが試しに送られたものの反応がなく、運用チームはフィラエが息絶えた可能性も考えていたという。

DLRの発表によると、今回フィラエと通信できたのは、中央ヨーロッパ夏時間2015年7月9日19時45分から20時7分(日本時間2015年7月10日2時45分から3時7分)の12分間で、この間は安定して通信ができていたものの、その後通信はまた途絶えたという。

DLRのエンジニアで、フィラエの運用チームのメンバーであるKoen Geurtsさんは「フィラエからのこの生存のサインは、少なくともフィラエの通信装置が生きており、コマンドを受信しているということを証明しています。私たちは決してフィラエを見捨てず、また楽観的でいます」と述べている。

現在DLRでは、フィラエから送信されたデータの分析を行っており、すでにCONSERTが起動に成功したことも確認できているという。

ただ、なぜここ数日は通信ができなかったにもかかわらず、今は通信ができているのかは謎のままだという。たとえばこの間、ロゼッタの軌道は変わっておらず、通信条件に大きな違いはなかったという。ただ、フィラエが彗星の厳しい環境の中で生き延び、地上から送られたコマンドに反応を返したことだけは確かであり、Geurtsさんは「この事実は私たちにとって非常に良いニュースです」と語っている。

フィラエは2004年3月2日、母機であるロゼッタに搭載されて地球を出発し、10年を超える航海を経て、2014年8月6日に目的地であるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着した。そしてロゼッタの調査によって着陸地点が選ばれ、11月13日0時33分(日本時間)に、フィラエは彗星表面に向けて投下された。

しかし、機体を彗星表面に固定するために器具がうまく作動せず、2度バウンドした後、起伏の多い岩場と思われる場所に落ち着いた。機体も大きく傾いていたこともあり、太陽光が十分に当たらず、太陽電池による発電が十分にできない状態だった。しかし、あらかじめ充電されていたバッテリーを使って活動を開始し、当初予定していた観測は、ほぼすべて完了することに成功している。そして着陸から約57時間後、バッテリーが切れたフィラエは活動を停止し、休眠状態に入った。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は今後徐々に太陽に近づいていく軌道に乗っているため、フィラエに当たる太陽光の量も増えることから、太陽電池の発電によってバッテリーが再充電され、再起動する可能性はあると予測されていた。そしてその予測は当たり、今年6月13日に再起動に成功し、7か月ぶりにその声を地球に届けた。

 

■DLR Portal - News - New communication with Philae – commands executed successfully
http://www.dlr.de/dlr/en/desktopdefault.aspx/tabid-10081/151_read-14156/#/gallery/17198