インド宇宙研究機関(ISRO)は現地時間7月10日、英国の人工衛星5機を搭載したPSLV-XLロケットの打ち上げに成功した。
ロケットはインド標準時2015年7月10日21時58分(日本時間2015年7月11日1時28分)、インド南部にあるサティシュ・ダワン宇宙センターの第1発射台(FLP)から離昇した。
ロケットに搭載されていたのは、地球観測衛星「DMC3」が3機、新しい技術を使って製造された地球観測衛星の技術実証機「CBNT-1」、そしてソーラー・セイルによって衛星を軌道から離脱させる実験機「デオービットセイル」の計5機。これらは打ち上げから約20分後までにすべて分離され、予定通りの軌道へと送り込まれた。
DMC3は、英国にある小型衛星開発の名門、サリー・サテライト・テクノロジー社(SSTL)が開発した地球観測衛星で、運用はSSTLの子会社でもある英国のDMCインターナショナル・イメージング(DMCii)社が担当し、中国の21AT社にリースされる。
DMCとはDisaster Monitoring Constellation(災害監視衛星群)の頭文字から採られており、そこからもわかる通り、主に自然災害や大規模事故、公害などへの対応をはじめ、都市開発、土地や水の資源調査などに活用されるという。
打ち上げ時の質量は447kgと小型ながら、パンクロマティック(白黒)の画像で分解能1m、3色のカラー画像で分解能3mという性能の光学センサーを持っている。これはSSTLが開発した地球観測衛星の中で、最も高い分解能だ。観測幅は24kmで、また45度の角度に機体を素早く傾け、観測したい方向にセンサーを向けられる能力も持っている。
今回打ち上げられた3機は今後、衛星に装備されている電気推進スラスターを使って軌道を変え、同じ軌道面に120度ずつ離れるように移動した上で運用される。これにより、地球上のあらゆる地点の上空を、最低1日1回通過し、撮影することができる。
CBNT-1もSSTLが開発した衛星だが、その詳細は不明だ。箱形の機体で、新しい地球観測技術の試験をする衛星だという。打ち上げ時の質量は91kgとされる。
デオービットセイルは 打ち上げ時の質量は3kgで、10cm四方の3つ分の3Uキューブサットと呼ばれるサイズをしている。本体からは1辺5mのセイルを展開し、大気との抵抗や太陽光の反作用によって、人工衛星を早期に軌道離脱させ、大気圏に再突入させる技術の実証を行う。これによりスペース・デブリ(宇宙ごみ)の処分などへの活用が期待されている。計画はサリー大学内にあるサリー・スペース・センターが主導し、このほかカリフォーニア工科大学やドイツ航空宇宙センター、エアバス・ディフェンス&スペース社など、世界各国の宇宙機関や企業が参画している。
PSLVはISROが運用するロケットで、PSLVとはPolar Satellite Launch Vehicleの頭文字から取られている。その名前からもわかる通り、極軌道への打ち上げに特化したロケットとなっている。今回で30機目の打ち上げとなり、実運用に入ってからは27機目の打ち上げとなった。試験機と実運用機のそれぞれ1号機以外に失敗はなく、26機連続成功という安定した打ち上げを続けている。
今回の打ち上げに使われたのはPSLV-XLと呼ばれる構成で、これはPS0M-XLと名付けられたブースターを6基装備していることを表している。PSLVにはもうひとつ、ブースターを持たないPSLV-CAと呼ばれる構成もあり、現在はこの2種類が主に運用に就いている。
■PSLV Successfully Launches Five Satellites from UK - ISRO
http://www.isro.gov.in/update/10-jul-2015/pslv-successfully-launches-five-satellites-uk