米航空宇宙局(NASA)は7月7日、準惑星ケレスを周回中の探査機「ドーン」の姿勢制御システムに異常が発生したため、6月30日から実施予定だった軌道変更を中止したと発表した。

ドーンは今年3月6日にケレスに到着し、4月23日から5月9日まで高度1万3500kmからの観測を、続いて軌道の高度を下げ、6月6日から30日まで、高度4400kmからの観測を行っていた。

当初の計画では、6月30日からイオン・エンジンに点火し、らせん状に軌道の高度を下げ、8月から高度1450kmの軌道からの観測が開始される予定だった。しかし、6月30日にイオン・エンジンを点火した直後に、機体の姿勢が制御できなくなり、それを検知したドーン自身が、イオン・エンジンなどを停止させ、必要最小限の機器のみを動かす「セーフ・モード」へ移行させた。

ドーンから「セーフ・モードに入った」という信号を受け取った地上の運用チームは、7月1日から2日にかけて対処にあたり、通常の運用モードに戻すことに成功したという。

NASAによると、今回の問題の分析が完了し、新しい飛行計画を立てるまでの間、高度4400kmの軌道に留まるという。

先日、冥王星に向けて航行中のニュー・ホライズンズにも、コンピューターの問題で一時セーフ・モードに入るということが起きているが、冥王星との邂逅のチャンスが一度きりしかないニュー・ホライズンズとは違い、ドーンはすでにケレスの周回軌道に乗っていることから、ある決まったタイミングで軌道を変えなければならない、というような制約はない。

したがって、今回の問題で3回目の軌道変更が遅れたとしても、観測目標を変えたり、あるいは得られる成果に変化がでたりといったことは起こらないとしている。

また、今年12月からは、軌道高度をさらに375kmまで下げた運用も行われる予定だが、こちらも単に開始日が遅れるだけで、影響はまったくないという。

ドーンは2007年9月27日に打ち上げられた探査機で、小惑星ヴェスタと準惑星ケレスの2つの星を探索することを目的としている。探査機が2つの天体を訪れ、その軌道に入って探査を行うのは世界初のことだ。

ヴェスタとケレスは共に、火星と木星の軌道の間の、小惑星帯の中に位置している。ヴェスタはこの小惑星帯の中で2番目に大きな天体、一方のケレスは1番大きな天体で、最大直径は950kmあり、内部には液状の水が存在している可能性もあるとされる。

ドーンは打ち上げ後、イオン・エンジンを使って宇宙を航行し、2009年2月に火星をスウィング・バイして加速、2011年7月11日にヴェスタに到着した。そして約14か月にわたって探査を行い、2012年9月5日にヴェスタを出発し、次の目的地であるケレスへ向けて航行し、今年3月6日に到着して観測を探査を続けている。

ドーンは約1年をかけて、ケレスの周囲を回りながら探査を行う予定となっている。その後の計画はまだ未定だが、機器などが正常で、探査機に余力があるようなら、さらに別の星を訪れる可能性もあるという。

 

■Dawn Mission | News | Dawn Holding in Second Mapping Orbit
http://dawn.jpl.nasa.gov/news/news-detail.html?id=4649