米航空宇宙局(NASA)は7月5日、冥王星への最接近を約10日後に控えた4日午後に、探査機「ニュー・ホライズンズ」に何らかの問題が発生し、通信ができない状態に陥ったと発表した。その後、通信は回復したものの、必要最小限の機能のみを動かすモードに入っており、科学観測機器が動かせない状態にある。

NASAによると、通信が取れなくなったのは東部夏時間2015年7月4日13時54分(日本時間2015年7月5日2時54分)のことだったという。

その後、15時15分(4時15分)に通信は回復したが、その間に探査機は、必要最低限の機能のみを動かす「セーフ・モード」に入っていた。これは探査機に搭載されているコンピューターが問題を検知したことで、自動的にメインのコンピューターから、バックアップのコンピューターに切り替えられたためだという。

発表が行われた5日の段階でもニュー・ホライズンズとの通信は取れており、探査機の本体や搭載機器の状態を示す信号(テレメトリー)が地球に向けて送られてきているという。今のところ、機体が壊れているなどの兆候はないというが、依然としてセーフ・モードに入ったままであり、通信途絶の原因を突き止め、解決しなければ通常の運用に戻すことができない。またセーフ・モードのままでは科学観測機器などが動かせないため、冥王星を観測することもできない。

NASAでは、4日16時(5日5時)にこの問題を調査する委員会が組織され、正常な状態に戻せるよう問題の分析と対策に当たっている。しかし、地球と探査機の間は約49億kmも離れていることから、通信には往復で約9時間もかかるため、復旧には1日から数日かかるだろうとしている。

目的地である冥王星の通過まで、現時点であと約9日間しかないため、一刻も早い復旧が望まれる。

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現在のところ、冥王星への最接近は日本時間2015年7月14日20時50分ごろに予定されている。冥王星をつぶさに観測できるチャンスはこの1回きりしかない。ニュー・ホライズンズは、他の惑星探査機のように、目的地の惑星の周りを回る軌道に乗るのではなく、その近くを通過することのみで観測を行う。もし冥王星の周回軌道に乗ろうとすると、より大型で複雑な探査機が必要となり、開発が現実的ではないためだ。

ニュー・ホライズンズは2006年1月19日、アトラスVロケットに搭載され、米フロリダ州のケープ・カナヴェラル空軍ステーションから打ち上げられた。以来、9年以上にわたり、冥王星を目指して宇宙を航行し続けている。

探査機は小型のグランドピアノほどの小さい体躯だが、かつては太陽系第9惑星と呼ばれ、人類未踏の星の一つでもある準惑星「冥王星」と、その周囲を回る「カロン」など5つの衛星の謎を解き明かす、大きな使命を背負っている。

冥王星はこれまで、地上の望遠鏡や宇宙に浮かぶハッブル宇宙望遠鏡によってしか観測が行われたことがなく、探査機が接近して詳細に観測が行われたことはない。

ニュー・ホライズンズは打ち上げ後、火星軌道、小惑星帯を通過し、2007年2月28日に木星をスウィング・バイし、さらに加速した。続いて土星、天王星の軌道を通過し、2014年8月25日には海王星の軌道を通過している。

その後、探査機は機器などを温存するために冬眠状態に入り、2014年12月に再起動され、今回の接近に向けた最初の段階への突入に備え、探査機と運用チームは準備を行った。

2015年2月ごろからは観測機器を使った、冥王星の本格的な観測が始まっていた。当時はまだ冥王星との距離が離れていたため、小さなドット程度にしか写らなかったが、航行コースの正確な測定や修正に役立てられていた。

7月14日に冥王星と衛星カロンに最接近した後は、データを地球に送信しつつ、太陽系外縁のエッジワース・カイパーベルト天体の探査にも挑む。そしてゆくゆくはヴォイジャー1のように太陽圏を脱出し、星間空間を旅する予定となっている。

 

■New Horizons Team Responds to Spacecraft Anomaly | NASA
http://www.nasa.gov/nh/new-horizons-responds-spacecraft-anomaly

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