ロシア航空宇宙防衛部隊(VVKO)は6月23日、軍事衛星を搭載した「ソユーズ2.1b」ロケットの打ち上げに成功した。衛星の正体は明らかにされていないが、電子偵察衛星「ピルソーナ」の3号機であるという見方が濃厚だ。
ロケットはモスクワ時間2015年6月23日19時44分(日本時間2015年6月24日1時44分)、ロシアのアルハーンゲリスク州にあるプレセーツク宇宙基地の43/4発射台から離昇した。
VVKOによると、衛星は予定通りの軌道に乗り、地上局との通信も確立できたと発表している。また米戦略軍が運用する宇宙監視ネットワークも、高度約187 x 700km、軌道傾斜角98.3度の軌道に、2つの物体が乗っていることを検知しており、一方が衛星、もう一方がロケットの第3段と見られる。
今回打ち上げられた衛星の正体は明らかにされていないが、多くの専門家の見立てによると、電子光学センサーを搭載した偵察衛星ピルソーナの3号機であると見られている。
ピルソーナはロシアの最新鋭偵察衛星で、一説によると、高度700kmの軌道から分解能50cmの画像を撮影することができる性能を持っているといわれる。高度700kmというのは光学偵察衛星としては比較的高い数字で、この場合対象物をより長時間見下ろせるという利点があるが、その反面、地上との距離が遠いため解像度が落ちてしまうことから、高い分解能を達成するには、高性能なレンズを備えた望遠鏡やセンサーを搭載しなければならない。この光学センサーやレンズは、ソヴィエト連邦時代から続く光学機器の名門LOMO社が開発を担当している。
ピルソーナはソユーズ・ロケットや地球観測衛星の製造などを手掛けている、ロシアのTsSKBプラグリェース社によって開発された。同社は1980年代にサプフィールと呼ばれる、高度1万から2万kmという極めて高い軌道から地上を監視する偵察衛星の構想を立ち上げたことがあり、その後ソ連の崩壊などが原因で計画は中止されたが、その概念や培われた技術は、このピルソーナへと受け継がれていると考えられている。
ピルソーナの開発は2000年にロシア政府よって承認されたが、要求される技術の高さや資金不足によって開発は難航し、1号機が打ち上げられたのは2008年7月28日であった。しかしロシアのメディアによれば、わずか2か月後に電気系統が故障し、2009年2月には機能を喪失したと伝えられている。一説によるとその原因は、コスト削減のために低品質の輸入品を使ったためだとされる。
その後、2013年6月7日に2号機が打ち上げられた。この2号機では、電気系統に大幅な改修が施されており、またスラスターなどの推進システムにも手が加えられた可能性が指摘されている。打ち上げは成功したものの、ふたたび打ち上げ後すぐに故障したと伝えられている。故障箇所は搭載コンピューターで、使用できるメモリーが半分となり、本来の性能が発揮できない状態になったとされるが、その後2014年に新しいソフトウェアがアップロードされたことで運用可能になり、現在も運用は続けられているという。
なお、2014年5月6日と今月6日には、撮影したフィルムを宇宙から回収する形式の旧型の偵察衛星「コーバリトM」の打ち上げが行われている。コーバリトMは2012年の打ち上げを最後に引退したと考えられていたが、ピルソーナ2号機が故障したことで生じたギャップを埋めるため、急きょ生産が再開され、打ち上げられたという説がある。
今回打ち上げられた3号機には、新たにデータ中継衛星と通信するためのレーザー通信装置が搭載されているともいわれている。
また、ピルソーナの現行機の打ち上げは今回の3号機で最後とされ、今後は第2世代機が打ち上げられるとされる。第2世代機では各所に改良が加えられていると思われるが、現時点で具体的な情報はなく、詳細は不明である。
■Расчет Войск ВКО провел успешный пуск ракеты-носителя «Союз-2.1б» с космодрома Плесецк : Министерство обороны Российской Федерации
http://structure.mil.ru/structure/forces/cosmic/news/more.htm?id=12043589@egNews