欧州宇宙機関(ESA)は6月14日、昨年11月にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星への着陸に成功し、探査を終えた後、バッテリー切れにより活動を停止していた探査機「フィラエ」が、再起動に成功したと発表した。
ESAによると、フィラエからの信号は中央ヨーロッパ夏時間2015年6月13日22時28分(日本時間2015年6月14日5時28分)に、ドイツ航空宇宙センター(DLR)にあるフィラエの管制センターで受信されたという。信号は彗星の周囲を飛んでいる探査機「ロゼッタ」を経由して送られたもので、最初の通信時間は85秒だったという。
フィラエのプロジェクト・マネージャーを務めるStephan Ulamec博士は「フィラエの温度は-35度C、電力は24Wと、非常に良い状態にある。フィラエは運用可能な状態だ」と述べ、探査活動が再開できることを明らかにした。
最初の通信では300を超えるデータ・パケットが受信でき、分析が行われた結果、今回のデータが送られてくるよりも前から、フィラエはすでに目覚めていたこともわかったという。ただ、今日まで通信することができなかったとされる。
フィラエに搭載されたメモリーには、実際に再起動してからの間に取得された、8000を超えるデータ・パケットが記録されているという。運用チームは現在、このデータをダウンロードするため、次の通信可能な機会を待っているとのことだ。
フィラエは2004年3月2日、母機であるロゼッタに搭載され、アリアン5 G+ロケットで打ち上げられた。そして10年を超える航海を続け、2014年8月6日に目的地であるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着した。ロゼッタの調査によってフィラエが着陸する場所が選ばれ、そして11月13日0時33分(日本時間)、彗星表面に到達した。
しかし、機体を彗星表面に固定するために器具がうまく作動せず、3度バウンドした後、起伏の多い岩場と思われる場所に落ち着いた。また機体も大きく傾いていたこともあり、太陽光が十分に当たらず、太陽電池による発電が十分にできない状態だった。しかし、あらかじめ充電されていたバッテリーを使って活動を開始し、当初予定していた観測はほぼすべて完了した。
そして着陸から約57時間後、バッテリーが切れたフィラエは活動を停止し、休眠状態に入った。しかし、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は今後徐々に太陽に近付いていく軌道に乗っているため、フィラエに当たる太陽光の量も増えることから、太陽電池の発電によってバッテリーが再充電され、再起動する可能性はあると予測されていた。
■Rosetta’s lander Philae wakes up from hibernation | Rosetta - ESA's comet chaser
http://blogs.esa.int/rosetta/2015/06/14/rosettas-lander-philae-wakes-up-from-hibernation/