ロシア航空宇宙防衛部隊(VVKO)はモスクワ時間6月5日、偵察衛星「コーバリトM」を搭載した「ソユーズ2.1a」ロケットの打ち上げに成功した。ソユーズ2.1aは、4月28日に機能喪失に陥ったプログレスM-27M補給船を打ち上げたロケットであり、事故から約1か月後、事故原因の発表からわずか4日後の打ち上げ再開となった。
ロケットはモスクワ時間2015年6月5日18時24分(日本時間2015年6月6日0時24分)、ロシアのアルハーンゲリスク州にあるプレセーツク宇宙基地の43/4発射台から離昇した。VVKOによると、衛星が予定通りの軌道に乗り、地上局との通信も確立できたと発表している。
コーバリトMはフィルム回収式の写真偵察衛星で、フィルム・カメラで地上を撮影した後、そのフィルムの入ったカプセルを地球に落として地上で回収、現像して解析するというものだ。現代ではディジタル・カメラで撮影し、そのデータを電波で地上に送る衛星がありふれているが、ロシアでは信頼性やコストの面、またデータ電送式の偵察衛星の配備が遅れていることなどもあり、未だにフィルム回収式の衛星が使われている。
コーバリトMは先代のコーバリトを改良した機体で、2004年から打ち上げが始まり、以後年1機ほどのペースで打ち上げられ、今回で10機目となる。ただ、いくつかの噂によると、今回をもってコーバリトMは最後になるという。ロシア軍は近年、新型かつデータを電送できる偵察衛星「ピルソーナ」の開発と配備を進めており、今年中にも3号機が打ち上げられる予定となっている。
衛星の製造はTsSKBプラグリェース社が全体の取りまとめを担当し、光学機器はKBアルセーナル社が担当している。2つの太陽電池パドルを持ち、軌道上での活動可能期間は、最大で130日ほどと見られている。打ち上げ時の質量は約6.7t、またある資料では7.6tであるとされる。
搭載されているカメラは約0.3mの分解能を持ち、撮影されたフィルムは衛星の両脇にある小さな2つの球形カプセルによって大気圏に再突入し、地上で回収される。また衛星中央の円錐台形状の部分も再突入が可能で、こちらはフィルムと一緒にカメラ本体も回収することができる。着陸場所は通常、ロシア南西部のカザフスタン共和国との国境に近いオレンブルークに設定されている。
この打ち上げは当初、5月15日に設定されていたが、打ち上げに使われたのと同じソユーズ2.1aロケットが、今年4月28日にプログレスM-27M補給船の打ち上げで問題を起こし、その結果プログレスM-27Mは機能喪失に陥るという事故を起こしたため延期されていた。ロシア連邦宇宙庁(ロスコスモス)は6月1日、事故の原因はソユーズ2.1aとプログレスM-M型の補給船との組み合わせた際にのみ発生する振動特性により、予定より早期に、なおかつ正常ではない分離をしたためであると発表している。
今回の打ち上げは、ソユーズ2.1a単体では問題が起きないことを証明するための役目も担っていたと思われるが、事故から約1か月後、また事故原因の発表からわずか4日後しか経っておらず、ロシアとしては信頼回復を急ぎたい狙いがあると考えられる。
なお、プログレスM-27Mの事故で、国際宇宙ステーション(ISS)に関連した飛行計画にも軒並み影響が出ており、5月14日に予定されていた、現在ISSに滞在している宇宙飛行士のうち3人の帰還は6月上旬に、また宇宙航空研究開発機構(JAXA)の油井宇宙飛行士ら3人の打ち上げは、5月27日から現時点で7月下旬へと延期されている。なお、油井飛行士らの打ち上げにはソユーズ2.1aではなく、旧型のソユーズFGが使われることが、プログレスM-27Mの事故よりもはるか以前に決められている。
ロスコスモスでは今後のISS関連の飛行計画について、6月9日までに決定するとしている。
■С космодрома Плесецк выполнен запуск космического аппарата военного назначения : Министерство обороны Российской Федерации
http://structure.mil.ru/structure/forces/cosmic/news/more.htm?id=12039824@egNews