
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月2日、小惑星探査機「はやぶさ2」の第2回イオン・エンジン連続運転を、6月2日より開始したと発表した。運転期間は6日までの約100時間で、搭載されている4基のイオン・エンジンのうち、2基を使ったものになる。無事に完了すれば、いよいよ今年12月3日に予定されている地球スイングバイに向けて、軌道がほぼ整うことになる。
「はやぶさ2」は2014年12月3日に打ち上げられた後、搭載機器の初期確認を2015年3月3日に終え、また同日から巡航フェイズに入り、イオン・エンジンを連続で運転して探査機の速度を上げる、第1回イオン・エンジン連続運転が行われた。この第1回連続運転時間は3月21日に無事完了し、運転時間は409時間を記録している。
連続運転は大きく2回に分け、合計約600時間行われることになっていた。だが、打ち上げの軌道投入精度や、第1回目連続運転での軌道制御精度が高かったことから、第2回目の稼働時間を当初予定の約200時間から約100時間に短縮することが可能になり、合計は約500時間になるという。これにより「はやぶさ2」は秒速60mほど速度を増すことになる。
この第2回連続運転が完了すれば、「はやぶさ2」は目的地の小惑星1999 JU3に向けた軌道に遷移するため、地球の公転速度を利用した探査機の航行速度の増速と、重力を利用した軌道の変換を行う地球スイングバイに向けて、軌道がほぼ整うことになる。。現時点で地球スイングバイは、今年の12月3日に実施される予定だ。
なお、第2回目の連続運転の結果によっては、地球スイングバイまでの間に、必要に応じて軌道微修正のためのイオン・エンジンが稼働される場合もあるという。
「はやぶさ2」は、かつて2003年に打ち上げられて小惑星イトカワの探査を行い、そして2010年に地球へ帰還した「はやぶさ」の後継機として、2014年12月3日に種子島宇宙センターから打ち上げられた。「はやぶさ2」は自身の持つ観測機器を使って探査を行い、また砂などのサンプルを採取して地球に持ち帰るというミッションを背負っている。「はやぶさ2」による観測や、また持ち帰ってきたサンプルを地球上で分析したり、さらに先代の「はやぶさ」や他の小惑星・彗星探査機が得たデータと比較することで、太陽系の起源と進化や、生命の原材料を探求することを目指す。
目的地の1999 JU3と呼ばれる小惑星は、有機物や含水鉱物をより多く含んでいると考えられている「C型」という種類の小惑星で、先代の「はやぶさ」が赴いたS型小惑星のイトカワと比べ、より始原的な天体であるとされる。
現在行われているイオン・エンジンの連続運転が無事に終われば、今年の11月、12月ごろに地球スイングバイに挑む。そして速度を上げつつ軌道も変え、2018年の6月、7月ごろに目的地である小惑星1999 JU3に到着する予定だ。そこで約1年半にわたって探査活動を行い、2019年11月、12月ごろに小惑星を出発、そして2020年の11月、12月ごろに地球に帰還カプセルを投下する。カプセルは地球の大気圏に再突入し、先代と同じオーストラリアのウーメラ砂漠に着陸する予定だ。また探査機本体はカプセル分離後も航行を続け、別の星の探査を行うことなどが計画されている。