有人宇宙船「ドラゴンV2」、発射台へ 6日に脱出システムの試験を実施

米スペースX社は5月6日、有人宇宙船「ドラゴンV2」の「パッド・アボート・テスト」に挑む。すでに試験機はフロリダ州ケープ・カナヴェラル空軍ステーションの発射台に設置され、試験に向けた準備が続けられている。

ドラゴンV2(もしくはクルー・ドラゴン)は、スペースX社が開発中の有人宇宙船で、2017年ごろにも、実際に宇宙飛行士を乗せた有人飛行を行うことが予定されている。

パッド・アボート・テストは、ドラゴンV2に装備された打ち上げ中断システム(もしくは打ち上げ脱出システムとも)が設計通り機能するかを試験するために実施される。打ち上げ中断システムは、宇宙船を載せたロケットが発射台(パッド)の上で爆発しそうになったり、飛行中にエンジンが止まるなどといった問題が発生したりした際に、乗組員の命を守るため、小型のロケットを使って宇宙船のみをロケットから引き剥がす役目を持つ。

アポロ宇宙船やソユーズ宇宙船では宇宙船の先端に塔のような形をした脱出システムを装着するが、ドラゴンV2では宇宙船自体に装備された「スーパードレイコー」と呼ばれるスラスターを使う。スーパードレイコーはドラゴンV2の側面に計8基が装備され、2秒で100m、5秒で500mも引き剥がすことが可能だ。また、脱出時だけではなく、宇宙船が陸上へ着陸する際の噴射でも用いられる。

実施日時は米東部夏時間2015年5月6日7時00分(日本時間2015年5月6日20時00分)に実施される予定で、打ち上げ可能時間帯は7時間半が確保されている。現時点で、天候は70%の確率で好天になると予測されている。試験の模様は、米航空宇宙局(NASA)が配信しているNASA TVで中継される。

今回の試験では、まず発射台からの離昇から0.5秒後に、ドラゴンV2は大西洋に進路を向け、各種センサーからのデータを基にスーパードレイコーの推力を制御しつつ飛行する。そして離昇5秒後にスーパードレイコーの燃焼が終わる。その後も慣性で飛行を続け、15秒後に1500mにまで達する。

打ち上げから21秒後に、宇宙船の後部にあるトランク部分が分離され、耐熱シールドのある底面を地上に向ける。その4~6秒後にドローグ・シュートと呼ばれる、小さなパラシュートを開き、さらにその10秒後にメイン・パラシュートを展開し、打ち上げから107秒後に、発射台から約2200m離れた大西洋上に着水する。

スーパードレイコーはこれまで、地上で燃焼試験が行われたことはあるが、実際に打ち上げ中断システムとして飛行が行われるのは今回が初めてとなる。同社によると「したがって、遅れや問題が発生する可能性は高い」としている。

試験は、普段ファルコン9ロケットが打ち上げられている場所と同じ、ケープ・カナヴェラル空軍基地の第40発射台(SLC-40)で行わる。

試験に用いられるドラゴンV2はほぼ本番同様の質量や機能を持つ。船内には加速度などを計測する各種センサーのほか、自動車の衝突試験などでおなじみのダミー人形も搭載される。

また今年の夏ごろには、飛行中のファルコン9ロケットから脱出する試験も実施されることになっている。

 

■5 Things to Know About SpaceX’s Pad Abort Test | SpaceX
http://www.spacex.com/news/2015/05/04/5-things-know-about-spacexs-pad-abort-test