ブラジルのFolha de Sao Paulo紙は4月9日、ブラジル政府が「ツィクローン4」ロケット計画を中止することを決定したと報じた。
この計画はブラジルとウクライナが共同で進めているもので、ウクライナが製造するツィクローン4というロケットを、赤道に近いブラジルのアルカンタラ発射場から打ち上げることを目指している。計画は2003年から始まり、当時は2007年の初打ち上げを目指していたが、資金難などが理由で計画は遅れ続けており、ウクライナ側が担当するロケットの開発はほぼ完了しているものの、ブラジル側が担当する発射台や周辺設備は未完成のままとなっている。
ツィクローン4は、ウクライナのユージュノエ社で設計され、ユージュマシュ社で製造されるロケットで、高度200kmの地球低軌道に5685kg、高度400kmの太陽同期軌道に3910kg、また近地点高度170kmの静止トランスファー軌道に1600kgの打ち上げ能力を持つとされる。
機体は、かつてソ連やウクライナで運用されていた、ツィクローン3ロケットを基に造られている。ツィクローン3は1977年から2009年までに122機が打ち上げられ、そのうち114機が成功という、まずまずの成功率を持つ機体だ。ツィクローン4はツィクローン3と第1段と第2段はほぼ同じだが、第3段を新しく開発したものと載せ換えることで、打ち上げ能力を高めている。またツィクローン3や、さらにその先代のツィクローン2は、主にソ連やロシアの軍事衛星や通信衛星、科学衛星などを打ち上げてきたが、ツィクローン4は世界中の民間企業から、衛星の商業打ち上げを受注することを狙っている。
1号機の打ち上げ時期は、最新の発表では早くとも2016年になるとされていた。積み荷は、日本の国立天文台や東京大学などが開発した位置天文衛星「ナノ・ジャスミン」と、50機のキューブサット(超小型衛星)が決定している。
しかし、かねてより続く資金難に加え、完成しても国際競争力が見込めないこと、また第1段と第2段にロシア製のロケットエンジンを使っているが、昨今のロシアとウクライナの対立により、今後エンジンが入手しにくくなったことが中止の理由だという。
記事では、ブラジル政府内での中止の決定は今年1月に下されたという。ただ、現時点でこの事業を手掛けているアルカンタラ・サイクロン・スペース社やブラジル政府、ウクライナ政府などからは、公式の声明は出されていない。また、アルカンタラ・サイクロン・スペース社は4月7日付けで、ツィクローン4打ち上げ用の地上設備の設計書が同社に送られてきたことを発表しており、ウクライナ宇宙庁も4月10日付けで、ツィクローン4計画は進行中とするOleg Uruskii長官のコメントを掲載している。
■Brasil vai cancelar acordo com Ucrânia para lançar foguetes - 09/04/2015 - Ciência - Folha de S.Paulo
http://www1.folha.uol.com.br/ciencia/2015/04/1614126-brasil-vai-cancelar-acordo-com-ucrania-para-lancar-foguetes.shtml