昨年10月に発生した、米国オービタルATK社(旧オービタル・サイエンシズ社)のアンタレス・ロケットの打ち上げ失敗について、ロイター通信は2月20日、燃料タンクからエンジンに向けて乾燥剤が入り込んだためではないかとする、事故調査委員会の関係者の発言を報じた。

記事によれば、ターボ・ポンプをはじめとするロケットエンジンのさまざまな場所から、結晶化した乾燥剤の粒子が発見されたという。そこから、乾燥剤がタンクからエンジンへ流れ込んで火花が発生、そしてその火花は、ターボ・ポンプの酸素に富んだ環境の中で火災を誘発し、そこからエンジンの爆発に至ったのではないかという説が浮上したという。

-PR-

この乾燥剤は、燃料タンク内の湿気を抑えるために入れられており、打ち上げの前に取り除かれることになっているが、オービタルATK社による作業時の不注意によって、残されたまま打ち上げられた可能性があるとされる。ただし、これはあくまで可能性のひとつであり、そうと決まったわけではない。また乾燥剤がエンジンに流れ込んだことで爆発したのか、あるいは爆発したことで流れ込んだのか、その関係性を決定することは難しいという。

同紙がオービタルATK社に取材したところによれば、「それは可能性のひとつではあるけれども、主要な候補ではない」と回答したという。

さらに別のソースは、「根本的な原因」を見つけるのは困難であることから、原因の断定はせずに調査を終えることになるかもしれないと語ったという。

この事故は2014年10月28日に発生したもので、シグナス補給船運用3号機を載せたアンタレス・ロケットが打ち上げ直後に爆発し、墜落した。シグナス補給船には国際宇宙ステーションに送り届けるための物資や実験機器などが搭載されていたが、すべて失われることになった。

アンタレスの第1段に使われているAJ-26は米国のエアロジェット・ロケットダイン社が製造したエンジンだが、元をたどれば、ソヴィエト連邦が今から40年ほど前に開発、製造し、その後倉庫で保管されていたNK-33というエンジンで、米国はそのNK-33を輸入し、アンタレスに装着するために細かな改修を施しただけにすぎない。また2014年5月には地上でエンジンの燃焼試験を行った際に爆発を起こしている。そうした背景から、事故直後にはロケットエンジンそのものが原因であると疑われていた。

この打ち上げ失敗を受け、オービタルATK社ではアンタレスに新しいロケットエンジンを装備するなどした改良を行うことを決定し、2016年3月1日の打ち上げを目指して開発が行われている。また、その間シグナス補給船は、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社が運用するアトラスVロケットで打ち上げられることが決まっている。

 

■Exclusive: Orbital explosion probe said to find debris in engine: sources | Reuters
http://www.reuters.com/article/2015/02/20/us-orbital-atk-gencorp-explosion-idUSKBN0LO28P20150220

-ads-

-ads-