スペースX社は2月10日(現地時間)、地球・宇宙天気観測衛星DSCOVRを搭載したファルコン9ロケットの打ち上げに成功した。一方、ロケットの第1段機体を船の上に降ろして回収する試験は、船が待つ海域が悪天候であったことから行われず、海上に着水させるのみに止まったが、結果は良好で、成功への期待は高まった。

ロケットは米東部標準時2015年2月11日18時3分(日本時間2015年2月12日8時3分)、米国フロリダ州にあるケープ・カナヴェラル空軍ステーションのSLC-40を離昇した。ロケットは順調に飛行し、約35分後に予定通りの軌道にDSCOVRを投入した。現在DSCOVRは近地点高度187km、遠地点高度124万1,000kmの軌道に乗っており、今後衛星側のスラスターを使い、地球から約150万km離れた、太陽・地球系のラグランジュ第1点に入る。

DSCOVRは米航空宇宙局(NASA)と米海洋大気庁(NOAA)が開発した衛星で、太陽から放出される荷電粒子や、磁気嵐の状況といった「宇宙天気」を観測すること、また地球の昼の側を常時観測することを目的としている。

DSCOVRはもともと、1990年代に開発がはじまったトリアーナ計画を源流としている。太陽・地球のラグランジュ第1点から、地球の太陽に向いている面を常に観測し続け、地球表面からのエネルギーの放射量やエアロゾル、オゾン、雲の動きなどを観測することを目的としていた。また、地球全体の姿をほぼリアルタイムで世界中に配信することで、環境問題への意識を高めることも期待されており、特にアル・ゴア米副大統領(当時)が大いに期待を寄せていた。しかし、得られる科学的な成果が乏しいとの判断から、衛星は完成していたにもかかわらず、2001年に計画は打ち切られ、衛星は保管されることになった。

ところがその後、NOAAが新たに宇宙天気の観測を目的とした衛星として生まれ変わらせるために資金提供を行い、DSCOVR(Deep Space Climate Observatory)という名前も与えられて復活を果たす。搭載する観測機器は変わらないが、ミッションの主役はNASAからNOAAとなった。また米空軍も、ファルコン9に打ち上げの機会を提供することを目的として資金提供を行った。

打ち上げ時の質量は570kgで、設計寿命は約2年が予定されている。

当初打ち上げは2月9日(日本時間)に予定されていたが、ロケットの追跡を担当する米空軍のレーダー施設の不調により延期となり、2月11日には天候不良により再び延期された。今回の打ち上げはファルコン9にとって15機目となり、現在運用されているバージョン1.1と呼ばれる機体構成の打ち上げに限れば10機目となった。これまで大きな失敗は起こしておらず、安定した打ち上げを続けている(2012年に、メインの積荷の軌道投入には成功したものの、相乗りしていた副衛星の投入には失敗するという問題を起こしている)。

今回の打ち上げでは、前回に引き続き、ファルコン9の第1段機体を大西洋上に浮かべた船の上に降ろし、回収する試験が行われる予定だった。しかし、今日は嵐の影響で波が高く、また船の位置を制御するために4基装備されている推進装置のうちの1つが故障したこともあり、実施はされなかった。

ただ代わりに、海の上に着水させる試験は行われ、その結果約10mの精度で、垂直に安定して降りてくることができたという。同社のイーロン・マスクCEOは「天気が安定していれば、船の上に降り立つことは可能だろう」とTwitterで述べた。

ファルコン9の次回のミッションは、今月27日に予定されているユーテルサット115ウェストBとABS-3Aの打ち上げになるが、この打ち上げと、さらに3月に予定されているその次の打ち上げでは、ロケットの持つ能力を最大限に使う必要があることから、着地に使うための追加の推進剤や着陸脚を積む余裕がなく、回収試験は実施されない見通しだ。次に回収試験が可能になるのは、今年4月に予定されているドラゴン補給船の打ち上げの際になる予定となっている。

 

■SPACEX LAUNCHES DSCOVR SATELLITE TO DEEP SPACE ORBIT | SpaceX
http://www.spacex.com/news/2015/02/11/spacex-launches-dscovr-satellite-deep-space-orbit