インド宇宙研究機関(ISRO)は12月18日、新型ロケットGSLV Mk-IIIの試験打ち上げに成功した。今回は人工衛星を軌道に乗せないサブオービタル飛行ではあったが、今後も開発が続けられ、2016年に軌道への打ち上げに挑む。またロケットには有人宇宙船の試作機CAREも搭載されており、再突入とパラシュート展開などの試験も行われた。
ロケットは2014年12月18日9時30分(日本時間2014年12月18日13時00分)、サティシュ・ダワン宇宙センターの第2発射台から離昇した。ロケットは順調に飛行し、打ち上げから約326秒後、高度約125kmでCAREを分離した。そしてCAREは大気圏に再突入し、パラシュートを開いて、アンダマン海に着水した。総ミッション時間は20分43秒だった。
GSLV Mk-IIIはISROが開発したロケットで、今回が初飛行だった。GSLVという名前はGeosynchronous Satellite Launch Vehicle(静止衛星打ち上げロケット)の頭文字から取られている。ISROではこれまで、GSLVとGSLV Mk-IIというロケットを開発したことがあるが、今回のGSLV Mk-IIIは、名前こそ似てはいるが、これら2機とは姿かたちがまったく異なるロケットだ。なお、このロケットを指す名前として、LVM3も使われ始めており、どちらに統一されるのかは不明だ。
GSLV Mk-IIIは地球低軌道に8,000kg、静止トランスファー軌道に4,000kgの打ち上げ能力を持つ。インドにとってもっとも強力なロケットで、商業衛星や惑星探査機、そして有人宇宙船の打ち上げに使うことが計画されている。
ロケットは、まず両脇にS200と呼ばれる大型の固体燃料ロケットを2基持ち、それに挟まれる形で、L110と呼ばれる液体燃料ロケット段を持つ。L110にはヴィカスというロケットエンジンが2基並べて装備されている。実は両脇の固体ロケットこそが第1段に相当し、まず固体ロケット部分のみで離昇し、中心のL110は空中で点火される。さらにその上にはC25と呼ばれる上段を持ち、高性能な液体酸素と液体水素を推進剤として使用するロケットエンジンCE-20が装着されている。
今回の打ち上げは、S200やL110が設計どおり機能するかの試験を目的としており、C25はダミーで、質量を合わせるためにタンク内には液体窒素が充填されていた。そのため衛星を軌道には乗せず、サブオービタルでの飛行であった。
ISROによれば、各段は問題なく機能し、打ち上げは成功だったとのことだ。今回の試験を受けて、さらに開発が進められ、次は実機のC25を搭載した、本番同様の打ち上げになるという。実施時期は2016年ごろとされている。
今回の打ち上げでは、ロケットの先端にはCAREと名付けられた、有人宇宙船の試作機が搭載されていた。CAREはCrew Module Atmospheric Re-entry Experimentの頭文字から取られており、直訳すると「乗員モジュールの大気圏再突入の実験」という意味になる。質量は3,775kg。CAREは打ち上げ後、ロケットから分離され、サティシュ・ダワン宇宙センターから約1,600km離れたベンガル湾の東にあたるアンダマン海に無事に着水した。
インドでは以前から、独自の有人宇宙船を開発する計画を進めており、今回のCAREの試験を受けて、さらに進められるものと思われる。だがこちらも、現時点では、具体的な有人飛行の実施時期などは設定されていない。
■Welcome To ISRO :: Press Release :: December 18, 2014
http://www.isro.gov.in/pressrelease/scripts/pressreleasein.aspx?Dec18_2014