欧州宇宙機関(ESA)は12月5日、金星を探査している探査機ヴィーナス・エクスプレスと通信ができなくなったと発表した。
通信が切れたのは11月28日のことで、それ以来、ESAが持つアンテナと、また米航空宇宙局(NASA)が持つ深宇宙ネットワークのアンテナも使い、通信回復の努力が続けられてきた。そして12月3日から、断片的ではあるものの探査機からデータが送られてきているという。それによれば、探査機の太陽電池パドルが太陽のある方を向いていること、そしてそれに伴って、機体全体がゆるやかに回転していることが分かっているという。
ESAによれば、11月26日から30日にかけて、ヴィーナス・エクスプレスのスラスターを噴射して軌道の高度を上げる運用を行っており、そのため燃料がなくなり、アンテナを地球の方向に向けることができなくなったのではないか、としている。ただ、まだ正確な原因は分かっていない。
現在、探査機の記憶装置に残っているデータの受信が試みられており、無事に受信できれば、通信途絶時に探査機に何が起きたのかが分かるかもしれない、としている。今後も新しい情報が分かり次第、発表するとのことだ。
ヴィーナス・エクスプレスは2005年11月9日に打ち上げられ、2006年4月11日に金星に到着し、以来8年以上にわたって観測を続けていた。当初予定されていたミッションはすでに完了し、現在は延長ミッションに入っている。しかし、燃料の残りが少なくなっていることや、機器が劣化していることなどから、ミッションの終わりが近くなっているということは以前から予告されていた。
また、今年6月18日から7月11日にかけては、軌道高度を大きく下げて金星大気の上層部に「突入」し、その抵抗でブレーキをかけて軌道を変える「エアロ・ブレーキング」と呼ばれる技術の試験も行われている。ある意味捨て身に近い試験だったが、これが行えたのも、すでにミッションを十分にこなし、いつ運用が終わってもおかしくない状態に近付いていたためだ。
■Venus Express anomaly | Rocket Science
http://blogs.esa.int/rocketscience/2014/12/05/venus-express-anomaly/