ロシアのタス通信は11月27日、イズベースチヤ紙の報道を引用する形で、ロシアの紫外線天文衛星スペークトルUFの開発を、米国が「妨害」していると報じた。

これはロシア科学アカデミー天文学研究所のボリス・シュストフ所長が語ったもので、英国の電子機器大手e2v社から輸入するはずだった耐放射線部品の一部に、米国製品が使われていたことから、米国務省がe2v社に対し、「ロシアへの輸出を認めない」との通告をしたという。ウクライナ情勢をめぐり、米国や欧州連合(EU)がロシアに対して行っている経済制裁の影響だという。

この耐放射線部品はスペークトルUFに搭載される放射線測定器に使われるものだという。e2v社では輸出の許可を求めて米国に働きかけたものの実らず、くだんの部品を英国製の部品で代用することを検討しているという。ただし、完成は予定より1.5年ほど遅れるとのことだ。

なお今年5月には、やはりe2v社から輸入する予定の紫外線検出器に米国製部品が使われていたことで、輸入ができなくなるという事態が生じている。

スペークトルUFはロシアのラーヴォチキン社や、ロシア科学アカデミーによって開発されている紫外線天文衛星だ。ロシアを中心とし、スペインやウクライナ、ドイツや中国など12か国が参加している国際共同計画で、「世界宇宙観測所・紫外線」(World Space Observatory-Ultraviolet, WSO-UV)とも呼ばれている。

打ち上げは2016年ごろに予定されているが、今回の件や、5月の件も含めて開発は遅れており、シュストフ所長によれば2020年以降になる可能性もあるという。

前回のロシアの紫外線天文衛星は、ソビエト連邦時代の1983年に打ち上げられたアストロンにまで遡る。アストロンはフランスと共同で開発され、ハレー彗星の観測などで大きな成果を残し、1989年に運用を終了した。その傍ら、アストロンの後継機となる計画が1988年に提案され、これが現在のスペークトルUFである。

当初打ち上げは1997年に予定されていたが、他の宇宙計画と同じくソビエト崩壊とロシアの資金難によって、同時期に提案された電波天文衛星スペークトルR、X線天文衛星スペークトルRGと共に、開発は遅れに遅れ、打ち上げ時期も延期され続けた。

その後、スペークトルRは2011年にようやく打ち上げられ、スペークトルUFやスペークトルRGもまた、遅れながらも開発が進められている状況だ。

 

■ТАСС: Космос - СМИ: США тормозят проект международной космической лаборатории "Спектр-УФ"
http://itar-tass.com/kosmos/1605565

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