中国政府は10月22日、月軌道からの帰還を実証するための試験機を、10月24日から26日の間に打ち上げると発表した。中国は2017年に、月からの砂の回収(サンプル・リターン)を目指す探査機「嫦娥五号」を打ち上げる計画を持っており、今回の試験はその前哨戦となる。

打ち上げは西昌衛星発射センターから、長征三号丙改二型ロケットによって行われる。打ち上げ時刻については発表されていないが、中国標準時1時59分(日本時間2時59分)という説が濃厚だ。

打ち上げに使われるロケットは「長征三号丙改二型」(CZ-3C/G2)と呼ばれており、これまで多くの衛星を打ち上げてきた長征三号丙(CZ-3C)を基に、そこにロケットからのデータをリアルタイムで地上に送ることができる装置が搭載された特別仕様機だとされる。データ中継には、中国がかねてより整備を進めていたデータ中継衛星「天鏈一号01星」、「同02星」、「同03星」の計3機からなるネットワークを用いるとのことだ。

試験機は、公開されている想像図によれば、通常の人工衛星に帰還カプセルがくっ付いたような姿をしている。その通常の人工衛星のような部分は「嫦娥一号」、「嫦娥二号」と同じ、通信衛星「東方紅三号」の衛星バスが使われているようで、電力供給や通信などを司っていると思われる。また帰還カプセルは、試験時に撮影された写真から、有人宇宙船「神舟」のものを縮小したような形をしていることが分かっている。

試験機は打ち上げ後、ロケットの第3段ともに月に向かって飛行する軌道に乗る。そして月の裏側を回り、そのまま今度は地球に向かって飛行し、最終的に大気圏に再突入する。月の周回軌道には乗らない。この軌道は自由帰還軌道(Free return trajectory)と呼ばれるもので、飛行中に事故を起こしたアポロ13の救出の際の軌道としても用いられたものだ。

大気圏再突入時の速度は第二宇宙速度(秒速11.2km)に近い。中国はフィルム回収式の偵察衛星や、有人宇宙船「神舟」で、第1宇宙速度からの再突入経験は豊富にあるが、これほどの速い速度で行った経験はない。カプセルの着陸地点は内モンゴル自治区の中部が予定されているという。打ち上げから着陸までは約8日間ほどとされる。

いくつかの報道によれば、嫦娥五号飛行試験機には細菌などの生物が搭載されるとされる。ヴァン・アレン帯の外の、高い放射線環境で生物がどのような影響を受けるかを実験し、将来の有人月探査の研究に役立てる狙いがあるとみられる。

また、ロケットの第3段には、ルクセンブルクの宇宙企業Luxspace社が開発した、4M(Manfred Memorial Moon Mission)と名付けられたビーコンを発信する装置が搭載される。第3段も試験機と同様の軌道に乗るため、この装置もまた月の裏側を通り、地球へ再突入する見込みだ。ただし第3段は軌道修正を行えないため、約10%ほどの確率で、大気圏に跳ね返され、別の軌道に乗る可能性もある。

 

■我国探月工程将首次实施再入返回飞行试验 飞行试验器将于24日至26日择机发射
http://www.sastind.gov.cn/n112/n52194/c423699/content.html