ロシアのプロトンMロケットの商業打ち上げを担っているインターナショナル・ローンチ・サービシズ(ILS)社は9月29日、今年5月のプロトンMロケットの打ち上げ失敗に関する、初期調査結果を公開した。

2014年5月16日6時42分01秒(日本時間)、プロトンM/ブリーズMは、通信衛星エクスプレースAM4Rを搭載して、カザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地を離昇した。ロケットの第1段、第2段の飛行は正常だったが、第3段が計画より40秒早く停止してしまい、ロケットは軌道速度を出せず、衛星と共に地球へ墜落した。大部分は大気圏への再突入時の熱で燃えて崩壊したが、一部は中国の北に落下している。

プロトンMの第3段は、メイン・エンジンのRD-0213と、4つのノズルからなるヴァーニア・エンジンのRD-0214から構成されている。加速は主にRD-0213が担当し、ステアリング(舵取り)はRD-0214が担当している。

事故直後、ロケットから送られていたデータから、RD-0214の方に何らかの問題が発生したことは分かっていた。そしてその時点ではターボ・ポンプのベアリングに損傷が生じたことまで突き止められていた。

今回公開された初期調査結果は、それを裏付けるものであった。RD-0214のターボ・ポンプは、RD-0213の構造フレームにボルト締めで固定されているが、その結合面が構造破壊を起こしたという。そして固定がなくなったため、RD-0214のターボ・ポンプは振動を始め、酸化剤ガス・ジェネレーターへ繋がる燃料配管が破壊され、そこから燃料が漏れ出し、ターボ・ポンプが止まりRD-0214が燃焼を停止する。そして第3段がコントロールを失ったことで姿勢が乱れはじめ、やがてRD-0213も停止し、最終的に軌道速度を出すことができず墜落したという。

ボルト締めされた結合面が崩壊を起こした原因については、今後明らかにされるだろうとしている。なお、『SpaceNews』紙によれば、ILS社はボルトの締め付けミスなどの兆候は見られないとしているという。

プロトンMは9月27日に、この5月の事故後初となる打ち上げを実施し、無事に成功している。今後は10月21日に通信衛星エクスプレースAM-6の打ち上げを、11月にはILS社によるプロトンMの商業打ち上げとして、ルクセンブルクのSES社の通信衛星アストラ2Gの打ち上げが予定されている。また、まだ確定はしていないが、12月には通信衛星ヤマル401の打ち上げも予定されている。

今後プロトンMは、信頼回復に向けて、連続で打ち上げを成功させ続けなければならない。その上でさらに、欧米の商業ロケットと張り合っていく必要もあり、プロトンMの前には険しい道が待っている。

その一方で、プロトンMを製造しているフルーニチェフ社は、新型のアンガラ・ロケットの開発を進めている。アンガラのいくつかあるバリエーションの中で、プロトンMとほぼ同等の性能を持つアンガラ5は、早ければ2015年から運用に入る予定だ。

 

■Express AM4R | Investigaton Concludes | Return to Flight Success | International Launch Services
http://www.ilslaunch.com/newsroom/news-releases/failure-review-oversight-board-frob-concludes-express-am4r-investigation-retu

関連記事