米航空宇宙局(NASA)は9月11日、今年12月に実施予定のEFT-1ミッションで使用される、オリオン宇宙船の試験機を報道陣に公開した。

オリオンは現在NASAとロッキード・マーティン社が開発中の宇宙船で、「NASAの宇宙船」としてはスペースシャトルの後継機にあたる。地球低軌道までにしか人を運べなかったスペースシャトルとは違い、オリオンはアポロ宇宙船のように月へ、そしてさらにその先の火星や小惑星へも人を運ぶことができる宇宙船として開発が進められている。

その最初のミッションは探査飛行試験1(EFT-1、Exploration Flight Test 1)と名付けられており、米フロリダ州のケープ・カナヴェラル空軍ステーションから、大型の人工衛星の打ち上げに使われているデルタIVヘビーロケットに、無人のオリオンを搭載して打ち上げる。

今回完成したオリオン試験機は、これまで組み立てが行われていたケネディ宇宙センターのニール・アームストロング・オペレーションズ&チェックアウト棟(Neil Armstrong Operations and Checkout Building)を出発し、同じセンター内にあるペイロード・ハザーダス・サービシング施設(Payload Hazardous Servicing Facility)へと移された。ここでオリオンに燃料の充填が行われた後、上から被せるような形で打ち上げ時の緊急脱出システム(LAS、Launch Escape System)が取り付けられる。

それが終われば、いよいよデルタIVヘビーの上に搭載され、打ち上げを待つこととなる。なお、ロケットはすでにケープ・カナヴェラル空軍ステーションに到着しており、こちらも並行して準備作業が進められている段階だ。

EFT-1は打ち上げ後、地球の軌道に乗り、まず地球低軌道を1周する。その後デルタIVの第2段エンジンを再点火させ、軌道の高度を上げ、約5,800kmにまで達した後、地球の大気圏に向けて落ちていく。大気圏に再突入後、パラシュートを開いて太平洋上に着水し、米海軍の支援により回収される予定だ。

大気圏再突入時の速度は秒速約9kmにもなり、耐熱シールドが受ける温度は摂氏約2,200度にまで達する。この試験により、オリオンの電子機器や耐熱システム、パラシュートなどが設計通り機能するかが確認される。ただし、EFT-1で使用されるオリオン試験機には太陽電池は装備されず、内蔵バッテリーで駆動する。また生命維持システムやスラスターなども搭載されず、サービス・モジュール部は実質、形だけのものとなっている。

当初このEFT-1は、今年の9月に実施が予定されていたが、米空軍の軍事衛星の打ち上げが優先されたため、12月に延期されることになった。

このEFT-1が完了した後、得られたデータからさらにオリオンの開発が進められ、そして2018年11月に探査ミッション1(EM-1、Exploration Mission 1)が実施される予定だ。EM-1でもオリオンは無人だが、打ち上げるロケットには、現在オリオンと並行して開発が行われている新型ロケットのスペース・ローンチ・システム(SLS)が使われる。EM-1では地球から月まで行き、月の裏側を回って地球に帰還するルート(自由帰還軌道)での飛行が行われ、オリオンの全システムと、SLSの能力が試験される。

EFT-1とEM-1が無事に完了すれば、いよいよ次はオリオンに実際に宇宙飛行士を乗せた、有人飛行が行われる予定となっている。

 

■NASA’s Orion Spacecraft Nears Completion, Ready for Fueling | NASA
http://www.nasa.gov/press/2014/september/nasa-s-orion-spacecraft-nears-completion-ready-for-fueling/#.VBID2fldWa9