フランスのアリアンスペース社は9月11日、2機の通信衛星ミアサット3bとオプタス10を搭載した、アリアン5 ECAロケットの打ち上げに成功した。アリアン5シリーズはこれで61機の連続成功となった。
ロケットは、ギアナ現地時間2014年9月11日19時5分(日本時間2014年9月12日7時5分)、南米仏領ギアナにある、ギアナ宇宙センターのELA 3から離昇した。当初打ち上げは同日18時21分(同6時21分)に予定されていたが、技術的な問題が2度発生したために延期された。
離昇後、ロケットは順調に飛行し、離昇から約27分後にミアサット3bを、続いてその約5分後にオプタス10を分離し、それぞれ所定の静止トランスファー軌道に投入した。今後両機は自身のスラスターを使い、目的地の静止軌道に向けて移動する。
ミアサット3bは、マレーシアを拠点とするミアサット(MEASAT)社が運用する衛星で、フランスのエアバス・ディフェンス&スペース社によって製造された。48本のKuバンド、1本のSバンド・トランスポンダーを搭載し、マレーシアやインドネシア、インドやオーストラリアに対して、通信や放送サービスを提供する。
打ち上げ時の質量は約5,897kgで、東経91.5度の静止軌道で運用される。設計寿命は15年が予定されている。
オプタス10はオーストラリアのオプタス(OPTUS)社が運用する衛星で、米国のスペース・システムズ/ロラール社によって製造された。24本のKuバンド・トランスポンダーを搭載し、オーストラリアやニュージーランド、そして南極大陸に通信サービスを提供する。
打ち上げ時の質量は3,270kgで、東経164度の静止軌道で運用される。設計寿命は15年が予定されている。
アリアン5は、エアバス・ディフェンス&スペース社が開発、製造しているロケットで、中でもECA型は、アリアン5シリーズの最新型で、また主力機として活躍中の機体だ。
アリアン5は、それまでアリアンスペース社が運用していたアリアン4ロケットを代替する目的で開発された。アリアン4は116機が打ち上げられ、失敗はわずか3機で、成功率97.4%という極めて高い信頼性を持つロケットだったが、1970年代に開発されたアリアン1を改良して造られたロケットであり、次第に性能が時代に追いつけなくなってきた。
アリアン5の検討は1984年から始まったが、当時は米国がスペースシャトルを打ち上げ始めた頃であり、欧州でも小型のスペースシャトル、エルメスの検討が始まっていた。そこでアリアン5には、エルメスを打ち上げられる、強力な打ち上げ能力を持つロケットになることが求められた。
だが、エルメスは開発を進めるにつれて、質量が目標を大きく超過するようになった。それに合わせてアリアン5の打ち上げ能力も増やされ、さらにエルメスの質量が増加すると、またそれに合わせてアリアン5の打ち上げ能力も増やされるという事態に陥った。その後、結局エルメスは開発が中止され、欧州の手元には、強力すぎる打ち上げ能力を持ったアリアン5ロケットだけが残った。
しかし、禍を転じて福と為すの言葉のように、この過大な能力を生かして、静止衛星を2機同時に搭載して打ち上げるアイディアが生み出され、その目論見は的中し、現在世界で最も成功している商業ロケットになった。
アリアン5の初期型であるアリアン5Gは、1996年6月4日に打ち上げられたが、爆発し、失敗に終わる。翌1997年10月30日に打ち上げられた2号機も、予定より高度が低い軌道に衛星を乗せる失敗を起こし、さらに1年後の1998年10月21日に打ち上げられた3号機でようやく成功を収めた。
その後、2002年12月11日には打ち上げ能力を増したアリアン5 ECAが登場し、こちらも1号機は失敗したものの、その後はすべて成功を収めている。その他、アリアン5G+、5GSといったバリエーションも存在し、またアリアン5 ESは欧州の宇宙ステーション補給機ATVの打ち上げに使われ、今後も航法衛星ガリレオの打ち上げで使われることになっている。
今回の打ち上げ成功により、アリアン5シリーズは61機、またアリアン5 ECAに限っても、44機の連続成功となった。
また現在、第2段をさらに改良し、打ち上げ能力を高めた、アリアン5 MEの開発が行われている。アリアン5 MEで開発された技術は、さらに次世代のロケットであるアリアン6にも活かされる予定だ。
■Arianespace - Press Release - Arianespace successfully launches MEASAT-3b and OPTUS 10 satellites
http://www.arianespace.com/news-press-release/2014/9-11-2014-VA218-launch-success.asp