ノーボスチ・ロシア通信社は9月6日、生物実験衛星ビオンMの2号機の打ち上げが2019年に実施されるだろうと報じた。

これは、ロシア科学アカデミー生物医学研究所(IBMP)のヴラジーミル・シチョーフ副所長が語ったものだ。ビオンMの2号機は、以前は2016年か2017年に打ち上げが予定されていたが、何らかの事情で開発が遅れていることになる。また、2020年までに4機のビオンMを打ち上げるとも表明されていたが、それもまた実現が不可能になったことになる。

ビオンMはロシアのRKTsプラグリェース社によって製造されている衛星で、動物や植物を搭載し、宇宙で実験を行った後、地上に帰還させ回収することを目的としている。またビオンMは、ビオン・シリーズの2代目にあたる。

オリジナルのビオンは、ゼニート偵察衛星やレスールス地球観測衛星から派生した機体だ。また、ゼニートやレスールスは人類初の宇宙飛行に成功したガガーリンが搭乗したヴォストーク宇宙船から派生した機体でもあり、ビオンはヴォストーク宇宙船の直系の子孫にあたる。したがって外見もそっくりで、もともと有人宇宙船だったことからも、軌道上で生物を生きながらえさせ、また大気圏に再突入し、安全に帰還させる技術は折り紙付きであった。

ビオンの1号機は1966年に打ち上げられ、1996年まで11機が打ち上げられた。搭載された生物は、細菌から昆虫、魚類、そしてネズミやアカゲザルに至るまで多岐に渡った。この一連の実験で、宇宙空間で生物がどのような影響を受けるかという事柄に関して多くの知見が得られ、それらの成果はミール宇宙ステーションや国際宇宙ステーションでの、宇宙飛行士の長期滞在でも役立てられている。

そして21世紀になるとビオンを改良したビオンMが開発され、2013年4月19日に1号機が打ち上げられた。ヴォストークに似た特徴的な回収カプセル自体に大きな変化は無いが、電力をバッテリーから賄っていたビオンとは異なり、ビオンMには大きな太陽電池パドルが搭載されるようになった。また生命維持装置も改良されており、従来のビオンの宇宙での滞在可能期間は最大3週間ほどであったが、ビオンMでは最大半年にまで延びている。

また、機体後部の機械船部分にはペルソナ偵察衛星やレスールスDK地球観測衛星に使われているものが流用され、より精密な軌道の変更や、着陸地点の制御が可能になると思われる。運用される軌道も、従来の高度200km~400kmから、575kmにまで上げられ、宇宙放射線の被曝量が増加し、より効果的な実験が期待できるとされる。

1号機の打ち上げ時の質量は6,840kgで、ハツカネズミ45匹、スナネズミ8匹、ヤモリ15匹、カタツムリ20匹のほか、魚や植物、植物の種や微生物などが搭載されていた。ミッション期間は1ヶ月が予定されており、実際打ち上げからちょうど1ヵ月後の5月19日に、ロシアのオレンブルク地域に着陸した。だが、搭載されていた8匹のスナネズミと40匹の魚(ティラピアの一種)はすべて死亡、また45匹のハツカネズミは16匹しか生き残らなかった。15匹のヤモリと20匹のカタツムリ、その他微生物は生き残ったものの、事前に予測されていた死亡率の5%からはから大きく上回ってしまう結果となった。

スナネズミの死亡は装置の故障によって酸素や食料、光や換気が提供されなかったために起き、また魚の死亡も水槽の故障によるものであるとされている。このような結果になったにもかかわらず、実験を主導するロシア生物医学問題研究所(IMBP)は「長年に渡って、有人飛行を含む、宇宙における生物実験の実績があるので、研究目的は達成できる。ミッションは成功と言える」と発表している。

 

■Новый российский спутник серии "Бион" создадут к 2019 году | РИА Новости
http://ria.ru/space/20140906/1023052454.html