アリアンスペース社は8月22日、欧州の全地球測位システム・ガリレオに用いられる航法衛星、ガリレオFOC M1 SAT 5と同6の2機搭載したソユーズST-Bロケットを打ち上げた。当初、打ち上げは成功したと発表されたが、その後地上から観測で、衛星が予定していた軌道に入っておらず、打ち上げが失敗していたことが判明した。

ロケットはギアナ時間2014年8月22日9時27分(日本時間2014年8月23日21時27分)、南米仏領ギアナにある、ギアナ宇宙センターのソユーズ射場(ELS)から離昇した。ソユーズの第1段から第3段は順調に飛行し、約9分間にフレガート上段を分離した。

その後、フレガートは2回に分けて燃焼を行い、打ち上げから3時間47分57秒後に、2機のガリレオ衛星を高度23,522km、軌道傾斜角55.04度の円軌道に投入するはずだった。しかし、米国の宇宙監視ネットワークによる観測結果によれば、現在2機の衛星は高度約13,700km x 25,900km、軌道傾斜角約50度という、予定から大きく外れた軌道に乗ってしまっている。

今後、この2機が、自身のスラスターを使って予定通りの軌道に上がることができるのか、あるいは運用が継続されるのかはまだ不明だ。

アリアンスペース社によれば、目標の軌道に達していないことを確認したとして、現在調査を行っているという。フランス時間で23日中に、詳しい情報を提供したいとしている。

フレガートはロシアのNPOラーヴォチキン社によって開発、製造されている上段で、ソユーズやゼニートで使われている。非対称ジメチルヒドラジンと四酸化二窒素を推進剤とし、最大3日間の軌道滞在と、20回以上ものエンジンの再着火が可能だ。またタンク形状が異なる、いくつかの種類が存在する。

フレガートはこれまでに47機が打ち上げられ、2度の失敗を起こしている。

最初は2009年5月21日、ロシアの軍用通信衛星メリディアーン2を打ち上げた際に起き、第2回の燃焼時に問題が発生し、今回のように予定していた軌道に投入できなかった。

2回目は2011年11月8日の火星探査機フォボス・グルントと蛍火一号の打ち上げにおいて起き、ゼニート・ロケットからの分離後、フレガートのエンジンが点火せず、軌道を脱出して火星に向かう軌道に乗り移ることができなかった。ただしこの時使われたフレガートは、フォボス・グルントと一体化した構造をしており、また推進剤の搭載量を増やした「特注品」であり、さらにトラブルの原因も探査機内のコンピューターにあったと推定されているため、フレガートそのものの失敗とは言いがたい。

ガリレオFOC M1 SAT 5、6は、欧州版GPSとも呼ばれる、全地球測位システム・ガリレオを構成する衛星だ。ガリレオFOCのFOCとは「Full Operational Capability」の略で、必要な能力をすべて持った、本格的な運用に使われる衛星のこと。今回の1号機と2号機の打ち上げを皮切りに、2017年までに全24機を軌道上に配備する計画だ。

ガリレオ・システムはこれまでに、実験機のジョーヴェが2機、そして軌道上実証機のガリレオIOV(In-Orbit Validation)が4機打ち上げられ、試験が続けられてきた。

この失敗によって、計画全体にどのような影響が出るかは不明だが、幸先の悪いスタートになったことは間違いない。

 

■Arianespace - Press Release - VS09 Soyuz launch: Galileo satellites orbital injection anomaly
http://www.arianespace.com/news-press-release/2014/8-22-2014-orbital-injection.asp