中華人民共和国は9日、観測衛星「遥感衛星二十号」を搭載した、四号丙ロケットの打ち上げに成功した。四号は昨年12月、打ち上げに失敗しており、今回が失敗以来初の打ち上げとなった。

ロケットは中国標準時2014年8月9日13時45分(日本時間2014年8月9日14時45分)、酒泉衛星発射センターから離昇した。中国政府、及び中国国営メディアの新華社は打ち上げ成功と発表。遥感衛星二十号は科学試験や災害対策、農作物の管理を目的としているとされる。

その後、米軍の宇宙監視ネットワークは軌道上に物体を検知し、打ち上げが成功したことが裏付けられた。だが、軌道には6つの物体が乗っており、これは遥感衛星二十号とロケットの最終段、及びデブリとして考えても数が多すぎるため、複数の人工衛星が載っていた可能性が指摘された。その後、打ち上げの様子を報じる中国中央電視台のニュース番組に、管制センターのスクリーン映像が映り込み、そこに「主星」、「副星一」、そして「副星二」の3機の衛星が搭載されていたことが示されており、憶測は決定的なものとなった。

今回のように、遥感衛星が複数に搭載されていたと思われる打ち上げは過去に3回ある。2010年3月5日の遥感衛星九号、2012年11月25日の遥感衛星十六号、2013年9月1日の遥感衛星十七号だ。打ち上げ後、軌道に乗った物体のうち3機が、あたかも編隊を組んで飛行しているかのように軌道を回っていることから、専門家の間では「中国版NOSS」ではないか、といわれている。

NOSSとは、Naval Ocean Surveillance Satellitesの略で、米海軍が運用するのひとつだ。NOSSは3機を1組とし、海上の船から発せられる電波を3機それぞれが探知する際の時間差から、発信源、すなわち船の位置を割り出すためのものであったとされる。冷戦期から配備が始まり、ソ連の軍艦の位置の把握のために使われた。現在はその後継機である、コードネーム・イントルーダーが活動しているとされ、また技術の向上により3機1組ではなく2機1組で運用されているようだ。

今回打ち上げられた遥感衛星二十号の3機は、高度1,085 x 1,102km、軌道傾斜角63.4度の軌道に乗っている。製造は中国東方紅衛星が担当した。

なお遥感衛星には、電子光学センサーを搭載するものと、合成開口レーダーを搭載するものもあり、今回の遥感衛星二十号と同様、打ち上げ後は決まり文句のように「科学試験や災害対策、農作物の管理を目的としている」と発表される。だが、実際にはそれらの目的に加えて、軍事目的でも利用されていることは想像に難くない。

打ち上げに使われた四号丙は中国の上海航天技術研究院(SAST)が開発したロケットで、四号シリーズの一つとして、主に極軌道への衛星打ち上げに使われている。

長征四号はもともと、長征二号を静止衛星打ち上げロケットに発展させる際にSASTが提案した構成で、長征二号に四酸化二窒素と非対称ジメチルヒドラジンを使用する第3段を追加している。だが、中国運載火箭技術研究院(CALT)が液体酸素と液体水素を使用する第3段を搭載した構成を提案、最終的にCALT案が選ばれ、これが現在の長征三号である。

一方、CALT案は液体酸素と液体水素を使う先進的な設計だったため、そのバックアップとしてSAST案も開発が行われた。その後長征三号が実用化されたため、SAST案は極軌道打ち上げロケットへと転用、すなわちそれが長征四号である。

長征四号の最初の機体、長征四号甲は1988年9月6日に初飛行し、1990年9月3日に2機目が打ち上げられ、引退した。その後1999年5月10日に、長征四号甲のフェアリングを大型化し、またエンジンなどに改良を施して打ち上げ能力を高めた長征四号乙が登場、さらに2006年4月26日には、第3段に再点火可能なYF-40エンジンを搭載した長征四号丙が投入された。

長征四号は全シリーズを通し、登場以来失敗することなく安定した打ち上げを続けていたが、昨年12月9日に長征四号乙が初の失敗を喫した。今回の打ち上げは失敗以来初の長征四号の打ち上げとなった。ただし、昨年の長征四号乙の失敗原因は第3段エンジンにあり、長征四号乙と丙では第3段エンジン自体が異なるため、厳密な意味では失敗から復活したわけではない。

現在のところ、長征四号乙の復帰飛行は、今月19日に予定されている。

 

■遥感卫星二十号成功发射_中国航天科技集团公司
http://www.spacechina.com/n25/n144/n206/n214/c733823/content.html