スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)社は5日、通信衛星アジアサット8を搭載した、ファルコン9ロケットの打ち上げに成功した。当初の打ち上げ予定時刻からは遅れたものの初日での打ち上げを成功させ、また前回のOG2衛星の打ち上げからわずか3週間しか経っておらず、しかも同一射点からの打ち上げを成功させた。さらに今月25日には、やはり同一射点からアジアサット6の打ち上げも予定されている。
ロケットは米国東部夏時間2014年8月5日4時00分(日本時間2014年8月5日17時00分)、フロリダ州のケープ・カナヴェラル空軍ステーションのSLC-40から離昇した。ロケットは順調に飛行し、約3分後に第1段と第2段を分離、第2段エンジンの燃焼を開始した。その6分後に第2段の第1回燃焼を終了し、約17分間の慣性飛行に入った。そして第2段エンジンを再度点火、1分間だけ燃焼して完了。その5分後にアジアサット8を分離した。
投入された軌道は高度185 x 35,786km、軌道傾斜角24.3度の静止トランスファー軌道で、今後衛星側のスラスターを用い、静止軌道へ移る。
アジアサット8は、香港に本拠地を置くアジア・サテライト・テレコミュニケーションズ(アジアサット)社によって運用される通信衛星で、東経105.5度の静止軌道上から中国やインド、中東や東南アジアに向けてサービスを展開する。また同軌道では、2011年に打ち上げられたアジアサット7がすでに運用されており、共同運用を行う。
衛星の製造はスペース・システムズ/ロラール社が担当、衛星バスにはSS/L-1300が用いられた。打ち上げ時の質量は明らかにされていないが、ファルコン9 v1.1が持つ最大能力での打ち上げであったことから、5t前後はあるのではないかと推測される。設計寿命は15年の予定だ。
ファルコン9はスペースX社によって開発されたロケットで、打ち上げ機数は今回で11機目、今年に入ってからは4機目の打ち上げとなった。ただし、6号機から使われているファルコン9 バージョン1.1には、1号機から5号機まで使われたバージョン1.0とまったく異なるロケットといえるほどの改良が施されており、実際の打ち上げ機数は6機と数えるべきであろう。
今回は、前号機と前々号機で行われた第1段の回収試験は実施されなかったため、逆噴射のための余分な推進剤は積まれず、着陸脚も装備されなかった。ファルコン9 v1.1は静止トランスファー軌道に約4.9tの打ち上げ能力を持つが、これは第1段回収のための追加推進剤と着陸脚を装備した場合での値であり、今回のように打ち上げ能力を全開に使った打ち上げでは、もっと大きいと考えられる。
また、これまで静止衛星の打ち上げでは、衛星側の軌道傾斜角の変更に必要なエネルギーが少なくて済む、スーパー・シンクロナス・トランスファー軌道に投入していたが、今回は通常の静止トランスファー軌道への投入となった。この場合、衛星側の負担が大きくなるのと引き換えに、ロケット側のエネルギー消費量が少なくて済む。回収試験を行わなかったことと合わせ、衛星の質量が大きかったための処置であると推察される。
今回の打ち上げは、前回7月14日のOG2衛星の打ち上げからわずか3週間しか経っておらず、しかも同一射点からの打ち上げであった。また今月25日には、やはり同一射点からアジアサット6の打ち上げも予定されており、すでに準備が進められている。さらに9月12日以降にはドラゴン補給船運用4号機の打ち上げも予定されている。
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