スペース・エクプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)社は14日、オーブコム社の通信衛星OG2を6機搭載した、ファルコン9 v1.1ロケットの打ち上げに成功した。また、ロケットの第1段を回収する試験も実施された。だが、今回の打ち上げまでには10回もの延期を繰り返しており、ロケットの信頼性に課題が残った。
ファルコン9 v1.1は米東部夏時間2014年7月14日11時15分(日本時間2014年7月15日0時15分)、米フロリダ州にあるケープ・カナヴェラル空軍ステーションのSLC-40から離昇した。ロケットは順調に飛行し、約3分後に第1段の燃焼を終え、第2段を分離。その後第1段は再度エンジンに点火し、速度と姿勢を制御しつつ降下を開始。一方、第2段も順調に飛行を行い、離昇から約15分後にすべての衛星を起動に投入した。
OG2はオーブコム社が運用する衛星で、シエラ・ネヴァダ社によって製造された。オーブコム社は地球低軌道を周回する多数の衛星群による通信サービスを展開しており、山や海などのインフラが整っていない場所での通信などで使われている。OG2はその次世代機となる。各衛星の質量は172kg、設計寿命は5年強が予定されている。
一方、大西洋上への着水と回収を目指した第1段は、着水に失敗した。スペースX社のイーロン・マスクCEOがTwitterで発表したところによれば、第2段との分離後、第1段は減速しつつ再突入し、順調に大西洋に向けて降下。着陸脚の展開にも成功したものの、着水直後に爆発したという。今後、ロケットから送られたデータを基に、分析を行うとしている。正常に着水できた場合は回収が行われるとされていたが、おそらく破片程度しか残っていないものと見られる。また今のところ、写真や映像などは公開されていない。
ファルコン9は今年4月の打ち上げでも第1段の回収試験を試みたが、この時も着水までうまくいったものの、海面が荒れていたことで機体が破壊され、回収には失敗している。
ただし、両打ち上げの主目的は、あくまで搭載していた衛星を所定の軌道に投入することであり、第1段の回収は「ついで」でしかない。また第1段を制御して再突入させ、着陸脚を展開しつつ着水まで持っていく過程はうまく行っており、試験としては十分と言えよう。スペースX社では今年中に陸上への着陸を行うことを狙っており、この一連の教訓が活かされることになるだろう。
今回のファルコン9によるOG2の打ち上げは、本来2013年9月に行われる予定だった。それが今回打ち上げられるまでには、判明しているだけでも10回もの延期が繰り返された。そのうち衛星のトラブルによるものが1回、気象条件によるものが1回で、他はすべてロケット側、あるいはスペースX側の問題であるとされる。
『SpaceNews』紙が報じたところによれば、今回の打ち上げでオーブコム社が支払った金額は4300万ドルであったとされ、この安さのため、オーブコム社はこの度重なる延期を許容しなければならなかったとしている。
スペースX社では今後、今年中に残り6回の打ち上げを計画している。その中には、追加のOG2衛星の打ち上げも含まれている。
今後、第1段の回収試験と同時に、天候悪化など以外の理由で延期することなく打ち上げができるかが注目される。
■Falcon 9 Launches ORBCOMM OG2 Satellites to Orbit | SpaceX
http://www.spacex.com/news/2014/07/14/falcon-9-launches-orbcomm-og2-satellites-orbit