米航空宇宙局(NASA)は2014年7月2日、新型ロケットSLSの、コア・ステージ(第1段)の設計案が、詳細設計審査を通過したと発表した。また同日、ボーイング社はNASAとの間で、このコア・ステージの開発を行う契約を結んだことを発表。またそこには、新たな深宇宙飛行用の上段の検討を始めることも盛り込まれている。SLSの開発は生産に向けた新たな段階に入った。
SLS(Space Launch System)は、NASAとボーイング社が開発しているロケットで、2011年に引退したスペースシャトルの実質的な後継機として運用される。しかし、地球低軌道までしか行くことができなかったスペースシャトルとは違い、SLSは月や小惑星、火星といった深宇宙に宇宙飛行士を送り込むことを目指している。
そのコア・ステージと呼ばれる第1段部分は、基本的にはスペースシャトルの外部タンク(ET)を流用し、改修されたものが用いられる。ロケットエンジンもスペースシャトルに使われていたRS-25Dが装備される)。その両脇には、やはりスペースシャトルで使われていたものを流用した固体ロケットブースター(SRB)が装備され、そして上部には、ミッションの目的や打ち上げるものの大きさ、質量に応じて何種類かの上段が用意されている。これらのバリエーションはそれぞれブロックIやブロックIAといった呼び名が付けられており、さらに有人宇宙船を搭載する型や、貨物のみを搭載する型にも分かれている。また第1段はいずれは設計を変えたRS-25Eに切り替えられ、SRBも液体燃料ロケットを使ったブースターに切り替えられることが検討されている。
今回のコア・ステージの詳細設計審査(CDR)は6月を丸々使って行われ、NASAのマーシャル宇宙センターによる指揮の下、11の専門家グループによって、約3,000個もの部品が詳細に分析された。そして無事に通過し、いよいよ設計から実際の開発へと移ることになった。当然の成り行きではあるが、設計を行ったボーイング社が引き続き開発も担当することになり、NASAと契約が結ばれた。契約額は28億ドル(現在の為替レートで2,860億円)。
またこの契約には、エクスプロレーション・アッパー・ステージ(Exploration Upper Stage)と呼ばれる、新しいSLS用の上段の検討を行うことも盛り込まれた。これは打ち上げ能力や、宇宙空間で運用する能力を、さらに高めようというものだ。
NASAが地球の低軌道外へと飛ぶロケットの最終設計審査を行ったのは、1960年代のサターンV以来のこととなる。また、SLSの最大構成であれば地球低軌道に142tもの物資を送り込むことができ、118tを送り込むことができたサターンVを超える、史上もっとも強力なロケットになる。だが、月に人間を送り込んだだけのサターンVとは違い、SLSはさらにその先の、火星や小惑星に人間を送り込むことを目指している。
SLSの最初の試験打ち上げは2017年12月に予定されている。この飛行では無人のオリオン宇宙船を載せて打ち上げ、その後宇宙船は月を回り、地球に帰還する計画だ。
そして2021年には、宇宙飛行士を乗せた最初の打ち上げが予定されており、この飛行ではあらかじめ月周回軌道に人為的に持ってきた小惑星に、オリオンと宇宙飛行士を送り込むことが計画されている。
■NASA's Space Launch System Marks Progress as Core Stage Passes Critical Design Review | NASA
http://www.nasa.gov/sls/core-stage-review-2014.html#.U7oZqbHo2HM