ロシア連邦宇宙庁(ロスコスモス)は4日、新型ロケットのアンガラの1号機を、6月25日にプレセツク宇宙基地から打ち上げると発表した。開発が始まってから約20年、ロシア連邦初の新型ロケットがいよいよ誕生する。
アンガラは、現在活躍中のプロトンやゼニートロケットの後継機となるロケットで、モジュール式であることを最大の特長としている。アンガラの第1段はユニバーサル・ロケット・モジュール(URM)と呼ばれ、これを束ねることにより、打ち上げ能力を高めたロケットを簡単に造ることができるという仕組みだ。またそれに合わせて第2段を換装したり、第3段を追加で装備することで、様々な大きさ、質量の人工衛星に対応することができる。言い換えれば、アンガラと名の付くロケットは、小型ロケットであり、中型ロケットでもあり、また大型ロケットでもあり、そして超大型ロケットにもなれるというわけだ。
そして、もう一つの特長として完全なロシア製であることも挙げられる。プロトンはロシアのロケットではあるが一部の部品をウクライナから輸入しており、またゼニートは、エンジンはロシア製だが、ロケット自体はウクライナで製造されている。かつてウクライナはソビエト連邦の支配下にあったため何の問題も無かったが、ソ連崩壊後には独立国家となり、ロシアとウクライナの関係悪化もあり、次第にロケットの製造や運用に支障を来すようになっていた。それを受け、ロシアはプロトンの改良型として、ウクライナ製の部品を極力減らしたプロトンMを開発した。しかしゼニートではそうもいかず、ロシアからのエンジンの供給や、ウクライナでの製造で遅れが度々発生している。
ソ連崩壊後、ロシア単独で製造、運用できるロケットの開発が決定されたのは意外に早く1992年のことであった。だが、開発は思うように進まず、90年代中にはモックアップができていた程度で、ロケットエンジンの燃焼試験が始まったのも2001年になってからだった。2004年には開発資金を得るため韓国に接近、アンガラの第1段は韓国の羅老ロケット(KSLV-1)の第1段として使われた。つまりアンガラはアンガラとして打ち上げられたことはないが、第1段に限っては羅老を通じて3度の飛行経験がある。
今回の1号機の打ち上げで使われるのは、アンガラ1.2と呼ばれる、いくつかあるアンガラの構成の中で、もっとも打ち上げ能力が小さい機体だ。また今回特別にアンガラ1.2PPという名前が与えられており、PPとは「初打ち上げ」を意味するпервый пускの頭文字から取られている。
ただしアンガラ1.2PPは、実際の運用で使用されるアンガラ1.2とは多少異なっており、通常のアンガラ1.2が全体的にスラリとした姿なのに対し、アンガラ1.2PPは第2段が異様に膨らんだ、やや不格好な姿をしている。これは第2段に、アンガラA3やA5といった、大型ロケットの構成で使われるのと同じものを搭載しているためだ。その理由については明らかにされていないが、おそらくアンガラA3やA5用の第2段の飛行データを取りたいのであろう。なおアンガラ1.2の第2段とアンガラA3、A5の第2段のエンジンには、同じRD-0124Aが使われる。
またアンガラ1.2PPの打ち上げは弾道飛行となり、人工衛星を軌道に乗せることはしない。これはロシアにとってある種の伝統のようなもので、ソユーズロケットを近代化したソユーズ2でも、その最初の打ち上げは弾道飛行であった。
■О первом пуске ракеты-носителя «Ангара»
http://www.roscosmos.ru/20654/