宇宙航空研究開発機構(JAXA)は25日、H-IIAロケットの後継機となる、新たな基幹ロケットの開発と製造、運用を、三菱重工業株式会社に担わせることを発表した。この新型基幹ロケットは2014年度から開発に着手し、2020年度の初打ち上げを目指す。
新型基幹ロケットはすでに「H-III」との名前でも呼ばれており、日本がロケットを自由に打ち上げることができる自律性を確保しつつ、国際競争力を高め、ロシアや欧州がシェアの大半を握る衛星打ち上げ市場へ割って入ることが目指されている。開発を行うこと自体はすでに昨年のうちに決定されており、総開発費は約1,900億円と見込まれている。また文部科学省は来年度予算案で、このロケットの開発費として70億円を要求、20日に予算案が成立したことで確定した。
今回の決定にあたっては、事業者の公募が行われたものの、参加したのは三菱重工のみであった。そもそも現在、日本で大型の液体燃料ロケットを開発できるのは三菱重工しかない。実際の開発にあたっては、JAXAは開発の取りまとめを、三菱重工は実際の開発と製造、そして開発後の運用をそれぞれ担う。
新型基幹ロケットの外見はH-IIAと良く似ており、また第1段と第2段に液体水素と液体酸素の組み合わせを使用するロケットエンジンを持ち、打ち上げ時に固体ロケットブースターを用いる点や、そのブースターの本数を変えることで様々な衛星の打ち上げに対応できる点も、H-IIAと似ている。
しかし、目標としている打ち上げコストはH-IIAの50%から80%ほどと格段に安く、また第1段エンジンと第2段エンジンはまったくの新規開発となる。固体ロケットブースターもイプシロンロケットの第2段との共用が考えられており、種子島宇宙センターの組立棟や発射台などの施設も大きく改良されるなど、H-IIAから大きく進化した、まったく新しいロケットとなる予定だ。
2020年代に向けては、商業打ち上げ最大手のフランスのアリアンスペース社も新型ロケット、アリアン6を登場させる予定で、ロシアやインドでも新しいロケットの開発が進められている。そして米国では極めて低コストなファルコン9ロケットが着実に打ち上げ成功を続けており、打ち上げの受注も続々と獲得している。新型基幹ロケットはこれら強敵たちとの熾烈な競争に挑む。
日本の基幹ロケットが国際競争を意識したのはこれが初めてではない。H-IIやH-IIAの開発でも常に念頭に置かれてはいたものの、打ち上げコストなど、様々な要因から他のロケットの後塵を拝してきた。新型基幹ロケットではそれを覆すことができるか。JAXAや三菱重工が持つ技術力と、日本の宇宙開発を取り仕切る内閣府の手腕が試される。
■JAXA | 新型基幹ロケットの開発及び打上げ輸送サービス事業の実施事業者の選定結果について
http://www.jaxa.jp/press/2014/03/20140325_rocket_j.html