インド宇宙研究機関(ISRO)は5日、通信衛星GSAT-14を搭載したGSLV-D5ロケットを打ち上げた。GSLVの打ち上げは、2回連続での失敗に終わった2010年12月25日以来、3年ぶりとなる。
GSLV-D5はインド標準時1月5日16時18分(日本時間同日19時48分)、サティシュ・ダワン宇宙センターの第2発射台から離昇した。ロケットは順調に飛行し、離昇から約14分後、衛星を所定の静止トランスファー軌道に送り込み、打ち上げは成功した。
今回の打ち上げはもともと2013年の8月19日に予定されていたが、カウントダウン中に燃料漏れが見つかり中止、いったんロケットは組み立て棟に戻され、部品の交換と再検査が行われた。
GSAT-14はISROが製造した通信衛星で、インド全域に通信サービスを提供する。また新たに開発された光ファイバージャイロや太陽センサーなどの技術実証も兼ねている。打ち上げ時の質量は1,982kgで、約12年に渡り運用される予定だ。現在衛星は近地点高度が約180km、遠地点高度が約36,000km、軌道傾斜角が約19度の軌道に乗っており、今後衛星側のスラスターを使い、最終的に東経74度の静止軌道へと移動する。
GSLVはISROが開発したロケットで、静止衛星の打ち上げに特化した構成をしており、GSLVという名前もGeosynchronous Satellite Launch Vehicle(静止衛星打ち上げ機)という英語の頭文字から取られている。
ISROはもう一つ、極軌道への衛星打ち上げに特化したPSLVというロケットも持っており、GSLVはPSLVの技術を使い開発された。例えばGSLVの第1段とPSLVの第1段は共にS-139と呼ばれる固体ロケット段で、またGSLVのブースターと第2段に使われているヴィカスと呼ばれる液体燃料エンジンは、PSLVでも第2段に使われている。そしてその上の第3段にロシア製のKVD-1Mと呼ばれる液体燃料エンジンを搭載し、GSLVは構成されている。打ち上げ能力は静止トランスファー軌道に2,000kgから2,500kgほどだ。
GSLVは今日に至るまで苦難の道を歩んできた。GSLVの1号機は2001年4月20日に行われたが、第3段が予定より早く停止してしまい、計画より低い軌道に衛星を投入してしまった。2003年5月に行われた2号機、また2004年9月の3号機の打ち上げには成功したが、2006年7月10日に打ち上げられた4号機では、4基あるブースターのうち1基が離昇直後に故障し、ロケットは飛行経路を外れて爆発した。それでも2007年9月には5号機の打ち上げに成功し、挽回を図った。
ここでGSLVには、見た目には目立たないが、しかし大きな改良が加えられた。第3段のロシア製KVD-1Mを、インドが自力で開発した、CSと呼ばれるエンジンに換装したのだ。CSはKVD-1Mと同じ液体酸素と液体水素を推進剤として使用し、また性能も瓜二つで、これによりロシアへの依存から脱却することを見込んでいた。CSエンジンを積んだGSLVはマーク2(GSLV Mk-II)と呼ばれ、GSLVの6号機で導入、試験飛行が行われた。
GSLV Mk-IIは2010年4月15日に打ち上げられたが、まさにMk-IIの肝である第3段エンジンが点火2.2秒後に故障、打ち上げは失敗した。ISROは残っていた従来型のGSLV(GSLV Mk-I)の打ち上げを続けつつ、Mk-IIの開発を続けることにした。しかし同じ年の12月25日に7号機として打ち上げられたMk-Iは、離昇直後にブースターが故障し、53秒後に指令破壊され、またもや失敗に終わった。
今回のGSLV-D5の打ち上げに当たっては、エンジンのターボ・ポンプや第2段と第3段の段間部に改良が加えられ、エンジンの点火の手順も変更された。また飛行中の様子を記録するためのカメラも初めて搭載された。
GSLV Mk-IIは今後も通信衛星や、月探査機チャンドラヤーン2の打ち上げに使われる予定となっている。
また現在ISROは、GLSV Mk-IやMk-IIの後継機として、GSLV Mk-IIIの開発を進めている。Mk-IIIはMk-1やMk-IIとは共通点がほとんど無いまったく新しいロケットで、例えば第3段にはCE-20と呼ばれる、CSよりも強力なエンジンが搭載され、第2段にはクラスター化されたヴィカスエンジンが使われるなど、いくつもの新技術が使われている。GSLV Mk-IIの開発でつまづくようではMk-IIIの未来も無く、今回の成功はインドの宇宙開発の未来にとって重要な意義を持つ。
■Welcome To Indian Space Research Organisation - GSLV-D5/GSAT-14 Mission
Last Updated on 2024/09/02