中国運載火箭技術研究院は12月2日、月探査機「嫦娥三号」を月へ向けて打ち上げた。嫦娥三号は月面への着陸と、無人探査車による探査を目指しており、1976年のルナ24による月面着陸以来、37年の歳月を経て、人類はついに月面へと戻る。
嫦娥三号を搭載した長征三号乙ロケットは、中国標準時12月2日1時30分(日本時間同日2時30分)、四川省にある西昌衛星発射センターの第二発射台から離昇した。ロケットは順調に飛行し、約19分後に 嫦娥三号を月へ直行する軌道に投入、打ち上げは成功した。
嫦娥三号は中国の長期的な月探査計画「嫦娥計画」によって開発された月探査機で、2007年の嫦娥一号、2010年の嫦娥二号に続く、3機目の探査機である。機体は着陸機と、「玉兎号」の愛称を持つローバー(探査車)から構成され、両者は結合された状態で打ち上げられ、月面に軟着陸した後、着陸機からローバーが降ろされる。ローバーは月面を走行して探査を行い、また着陸機もその場で観測を行う。着陸機には月面をいくつかの波長で撮影するためのカメラが搭載されており、ローバーにはそれぞれ走行用と車輪の状態確認用、そして観測用のカメラが装備されている他、レーダーを使った月の内部構造の調査、またアルファ粒子X線分光計や赤外線分光計を用いた土壌の調査も行われる。
打ち上げ時の全質量は約3,700kgで、そのうち着陸機は1,200kg、ローバーは120kg。探査車はその質量のうち、20kgが観測機器である。着陸機の電源には太陽電池と放射性同位体熱電発電機(RTG)が、ローバーの電源には太陽電池が用いられている。
近年の月探査機は月の軌道を周回するものばかりであり、探査機が月面に着陸するのは、1976年に送り込まれたソ連のルナ24以来37年ぶり、また月探査車が送り込まれるのは1973年のルノホート2以来、実に40年ぶりとなる。
月軌道への到着は12月6日が予定されており、その後12月14日に「虹の入江」と呼ばれる平地に着陸する予定だ。ミッション期間は約3ヶ月が予定されている。
打ち上げに使われたロケットは長征三号乙/G3(CZ-3B/G3)と呼ばれる、長征三号乙シリーズの中でも機体が延長された打ち上げ能力増強型に、4200Fフェアリング(直径4.2mのフェアリング)を装備したバージョンで、さらに今回の機体には嫦娥三号を打ち上げるため、ロケットの第3段に小型スラスターが装備されるなどの改良が施されているといわれている。
中国の月探査計画、嫦娥計画は大きく三段階に分かれており、嫦娥一号、二号の月周回衛星による探査を第一段階、そして今回の嫦娥三号、また四号の月面への軟着陸とローバーによる探査を第二段階とし、さらに続く第三段階となる嫦娥五号では、月面からのサンプルリターン(試料の回収)が計画されている。そのさらに後には有人の月面探査も計画されている。
嫦娥四号の打ち上げは2015年に予定されており、今回の嫦娥三号の運用を踏まえた改良が施されることになろう。また嫦娥五号は2017年以降になる見通しだ。
また現在、米国や欧州、ロシア、インドが新たな月探査機を開発しているほか、日本でも「かぐや」の後継機SELENE-2の検討がなされている。さらに韓国や、グーグル・ルナーXプライズに参戦している民間の企業や団体も月を目指しており、かつて米ソの覇権を競う場となった月は、今や百花斉放の時代を迎えつつある。
■长三乙火箭月城升空 嫦娥三号奔向月球_中国航天科技集团公司
http://www.spacechina.com/n25/n144/n206/n214/c591905/content.html
Last Updated on 2022/11/15