ロシアの航空・宇宙機開発の名門ラーボチキン社は22日、開発中の天文衛星スペークトルRGの進捗状況を公開した。
スペークトルRGはロシアが開発中のX線望遠鏡衛星で、RGとは「レントゲン」と「ガンマ」の頭文字から取られている。同機は打ち上げ後、太陽・地球のラグランジュ2点に置かれ、eRositaとART-XCと呼ばれる2基のX線望遠鏡を使い観測を行う。X線望遠鏡衛星と言えば欧州宇宙機関(ESA)のXMMニュートン、アメリカ航空宇宙局(NASA)のチャンドラが有名だが、スペークトルRGはより広範囲を観測できる。現在打ち上げは2014年後半に予定されている。
ラーボチキン社によれば、スペークトルRGのプロトタイプモデル(試作機)を製造し、振動試験などをすでに実施、現在は電気試験に向けた準備が進められている。またART-XCも開発を担当するロシア科学アカデミー宇宙科学研究所によって試験モデルが造られ、試験が続けられている。eROSITAも開発を担当するドイツのマックス・プランク研究所によってプロトタイプモデルが造られ、こちらはすでに試験を終え、フライトモデル(実際に宇宙で使われる物)の製造に入っている。現時点で2014年の打ち上げに向けた予定に変更はないとしている。
スペークトルRGの起源はソビエト連邦自体にまで遡る。1980年代、X線望遠鏡衛星スペークトルRG、紫外線望遠鏡衛星スペークトルR、そして紫外線望遠鏡衛星スペークトルUFの3つの天文衛星計画が立ち上がり、開発に向けた検討や、一部に関しては試作もが進められていた。時をほぼ同じくして、米国のNASAも複数の、そして異なる波長で宇宙を大々的に観測するグレート・オブザバトリーズ (Great Observatories) 計画を立ち上げていた。これは光学望遠鏡衛星ハッブル、ガンマ線望遠鏡衛星コンプトン、X線望遠鏡衛星チャンドラ、そして赤外線望遠鏡衛星スピッツァーの4つの衛星からなる大規模な宇宙観測計画だったが、3機のスペークトル望遠鏡衛星は、それに勝るとも劣らない可能性を持っていた。
しかしソビエト連邦が崩壊し、ロシアは開発資金を出し渋るようになった。90年代中ごろには、米国や欧州各国などに協力を打診、20カ国以上がこれに応じたが、結局開発は進まないまま2002年に一度中止され、スペークトルRを最優先に開発する方針に切り替える。NASAのグレート・オブザバトリーズの各機は次々に打ち上げられ、華々しい成果を上げる一方、スペークトル・シリーズは一機も打ち上げることさえできずにいた。
その後ロシア経済の復興に伴い、やや規模は小さくなったもののスペークトルRG計画は復活を遂げるが、やはりその後も開発は遅れに遅れてしまう。スペークトルRも同様に、2004年から2007年の間に打ち上げることを目指していたものの、開発の遅れにより、2011年にまでずれ込んだ。スペークトルRGは復活した時点で2006年に打ち上げが予定されていたが、現在は2014年に設定されている。
■ Текущее состояние дел по проекту «Спектр-Рентген-Гамма»
http://www.laspace.ru/rus/news.php#403