Space Norwayが北極域通信衛星を軌道投入 アメリカ宇宙軍のペイロードも搭載
【▲ 製造中のASBM衛星(Credit: Northrop Grumman)】

ノルウェーの国有企業Space Norway(スペース・ノルウェー)は2024年8月12日(日本時間・以下同様)、同社の通信衛星「Arctic Satellite Broadband Mission(ASBM)-1」と「ASBM-2」の軌道投入に成功しました。ASBMの目的は北極域へ通信サービスを提供することです。衛星には通信企業「Viasat(ヴィアサット、ビアサット)」による通信ペイロードのほかに、アメリカ宇宙軍の通信ペイロード「EPS-R(Enhanced Polar Sytem - Recapitalization)」も搭載されています。

【▲ 製造中のASBM衛星(Credit: Northrop Grumman)】
【▲ 製造中のASBM衛星(Credit: Northrop Grumman)】

■打ち上げから軌道投入まで

2機のASBM衛星を搭載したSpaceX(スペースX)の「Falcon 9(ファルコン9)」ロケットは、2024年8月12日11時2分にアメリカ・カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられました。今回使用されたFalcon9の1段目機体は22回目の飛行となり、太平洋上に待機していたドローン船への着陸(ランディング)に成功しました。

【▲ ASBMを搭載している、飛行中のFalcon9(Credit: SpaceX)】
【▲ ASBMを搭載している、飛行中のFalcon9(Credit: SpaceX)】

SpaceXによると、発射44分後にASBM-1の分離、発射47分後にASBM-2の分離に成功したということです。2機のASBMは軌道傾斜角63度・高度4万3500km×8100kmの長楕円軌道(Highly elliptical orbit、HEO)に投入されることで、北緯65度以北の高緯度地域に通信を提供できます。

■ASBMの概要と搭載されたペイロード

ASBMは北極域へ商業通信サービスと軍事通信サービスを提供する通信衛星です。ASBMの開発は2019年7月から、Space Norwayの子会社「HEOSAT」によって実施されています。衛星の製作はアメリカの民間企業Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)が担当しました。Space Norwayによると、衛星の重量は約2トンで、大きさは3m×3m×4m、太陽光パネルの翼幅は27mです。

【▲ SpaceNorwayの通信衛星「ASBM」のイメージ図(Credit: Space Norway)】
【▲ SpaceNorwayの通信衛星「ASBM」のイメージ図(Credit: Space Norway)】

ASBMにはさまざまなペイロードが搭載されています。まずViasatのKaバンド通信ペイロード「GX10A」「GX10B」は北極域へ通信を提供し、2025年初頭から半ばにサービスを開始する予定です。Viasatによると、ASBMは「ブロードバンド商業サービスペイロードを投入する世界初のHEO(長楕円軌道)ミッション」と発表しています。また、米宇宙軍の通信ペイロード「EPS-R」は米軍の北極域における通信を支援するペイロードで、国際的な商業宇宙ミッションに初めて搭載された米軍の運用ペイロードとなりました。

このほかにもノルウェー軍のXバンド通信ペイロードやノルウェー企業IDEASとESA(ヨーロッパ宇宙機関)による放射線監視装置も搭載されています。放射線観測装置は軌道上の放射線環境を測定し、ヨーロッパの衛星測位システム「Galileo(ガリレオ)」の次世代衛星における放射線防護の計画に必要な情報を収集することが目的です。

 

Source

  • Space Norway - HEOSAT
  • Northrop Grumman - Northrop Grumman-Built Arctic Satellite Broadband Mission Successfully Launches to Extend Arctic Connectivity
  • Northrop Grumman - ASBM Mission
  • Viasat - Arctic Broadband on the Way as Viasat Confirms Successful Launch
  • SpaceNews - SpaceX launches two satellites for Arctic broadband mission

文/出口隼詩 編集/sorae編集部