ドイツのHyImpulse Technologiesが観測ロケットの打ち上げ成功 推進剤にパラフィンを利用
【▲ HyImpulse Technologiesが開発した小型ロケット「SR75」(Credit: HyImpulse Technologies)】

こちらはドイツの民間宇宙企業HyImpulse Technologies(ハイインパルス・テクノロジーズ)が開発した観測ロケット「SR75」です。同社は日本時間2024年5月3日、SR75の打ち上げミッション「Light this Candle」を実施しました。

【▲ HyImpulse Technologiesが開発した小型ロケット「SR75」(Credit: HyImpulse Technologies)】
【▲ HyImpulse Technologiesが開発した小型ロケット「SR75」(Credit: HyImpulse Technologies)】

SR75は推進剤にパラフィン(固形パラフィン)と液体酸素を使用することが特色のロケットです。パラフィンを燃料として利用することにはロケットの安全性を高めつつ機体のコストを抑えられるメリットがあるといいます。

■「Light this Candle」ミッションとは

【▲ SR75の打ち上げの様子(Credit: HyImpulse Technologies)】
【▲ SR75の打ち上げの様子(Credit: HyImpulse Technologies)】

SR75は日本時間2024年5月3日、オーストラリア南部のコーニバ試験場から打ち上げられました。HyImpulse Technologiesによると、SR75の推進システムは予定通り機能し、ミッションは成功したということです。また、同社は2024年5月14日にX(旧Twitter)で、機体に格納されていたパラシュートを利用して地上へ帰還したSR75の回収に成功したと発表しました。

【▲ 地上へ帰還したSR75(Credit: HyImpulse Technologies)】
【▲ 地上へ帰還したSR75(Credit: HyImpulse Technologies)】

■SR75と推進剤について

HyImpulse Technologiesが開発したSR75は全長12m・重量2.5トンの単段式の観測ロケットです。最大到達高度は250km、ペイロードの搭載能力は最大300kgとされていて、前述の通りパラシュートを使用して地上で回収することが可能です。

【▲ 発射台に設置され、打ち上げを待つSR75(Credit: Southern Launch)】
【▲ 発射台に設置され、打ち上げを待つSR75(Credit: Southern Launch)】

HyImpulse Technologiesによると、SR75の特色であるパラフィンを使用した推進システムは点火の中断と再点火が可能であり、従来の燃料と比べて爆発するリスクが少ないということです。また、ロケットの構造を簡素化することで、従来の推進システムと比べてコストを40%削減可能で、その結果として衛星の打ち上げ費用を50%削減できるとされています。

■現在開発中の「SL1」ロケット

HyImpulse Technologiesは3段式ロケット「SL1」の開発を進めています。小型衛星を打ち上げるために設計されたSL1は全長33m・直径2.2m・重量50トンで、2025年末までに初打ち上げが予定されています。HyImpulse Technologiesによると、SL1は高度約500km以上の地球低軌道に600kgのペイロードを運搬する能力を有するということです。

【▲ HyImpulse Technologiesが開発中の3段式ロケット「SL1」の想像図(Credit: ESA)】
【▲ HyImpulse Technologiesが開発中の3段式ロケット「SL1」の想像図(Credit: ESA)】

なお、HyImpulse Technologiesは欧州宇宙機関(ESA)の商業宇宙輸送サービス支援プログラム「Boost!」の下でESAと契約を締結しました。Boost!は小型衛星の打ち上げサービスや軌道上放出サービスなどの商業宇宙輸送サービスを行う民間企業に対してESAが支援する仕組みです。ESAとHyImpulse Technologiesの契約は2020年3月と2023年12月に行われており、資金は主にSL1の開発支援費用として使用されます。

 

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文/出口隼詩 編集/sorae編集部