米民間企業インテュイティブ・マシーンズの月着陸ミッション「IM-1」を振り返る 打ち上げから活動終了まで
【▲ インテュイティブ・マシーンズ社の月着陸船「Nova-C」のフライトモデル(実機) (Credit: Intuitive Machines)】

日本時間2024年2月23日8時23分、米国の民間宇宙企業インテュイティブ・マシーンズ(Intuitive Machines)の月着陸船「Nova-C(ノヴァC)」が月着陸に成功しました。米国としては1972年12月に実施されたアポロ17号以来51年2か月ぶり、民間企業としては世界初の月着陸(軟着陸)です。この記事ではNova-Cによる初の月着陸ミッション「IM-1」の打ち上げから月着陸、そして活動終了までを振り返ります。

<ミッションの概要>

【▲ 打ち上げ前のインテュイティブ・マシーンズの月着陸船「Nova-C」 (Credit: Intuitive Machines)】
【▲ 打ち上げ前のインテュイティブ・マシーンズの月着陸船「Nova-C」 (Credit: Intuitive Machines)】

「Odysseus(オデュッセウス)」と命名されたNova-Cによる月着陸ミッション「IM-1」はインテュイティブ・マシーンズ初の月着陸ミッションです。2013年に設立された同社は米国テキサス州ヒューストンに本社があります。

IM-1の特色はアメリカ航空宇宙局(NASA)の商業月輸送サービス(CLPS)の下で選定された6つのペイロードを搭載していることで、インテュイティブ・マシーンズは月までペイロードを運搬するサービスを請け負いました。Nova-CにはNASAのペイロードだけでなく、民間企業や大学からの6つのペイロードも搭載されています。

<打ち上げ>

【▲ ケネディ宇宙センター39A射点から打ち上げられた、月着陸船「Nova-C」を搭載したファルコン9ロケット(Credit: SpaceX)】
【▲ ケネディ宇宙センター39A射点から打ち上げられた、月着陸船「Nova-C」を搭載したファルコン9ロケット(Credit: SpaceX)】

Nova-Cは日本時間2024年2月15日15時5分(米国東部標準時同日1時5分)、スペースXの「ファルコン9」ロケットに搭載されて、米国フロリダ州のケネディ宇宙センター39A射点から打ち上げられました。発射48分後に月遷移軌道(LTO:lunar transfer orbit)への投入に成功。Nova-Cは日本時間2月17日までに主エンジンの点火試験に成功し、月周回軌道への投入に向けた大きなマイルストーンを達成しました。

関連記事:スペースXがインテュイティブ・マシーンズの月着陸船「Nova-C」の打ち上げに成功 民間初の月着陸目指す(2024年2月19日)

<月周回軌道への投入>

【▲ 月着陸船「Nova-C」に搭載されているカメラで撮影された月面の画像。月周回軌道投入後に撮影(Credit: Intuitive Machines)】
【▲ 月着陸船「Nova-C」に搭載されているカメラで撮影された月面の画像。月周回軌道投入後に撮影(Credit: Intuitive Machines)】

インテュイティブ・マシーンズは日本時間2024年2月22日0時22分付で、Nova-Cを月周回軌道へ投入することに成功したと発表しました。Nova-Cは当初の予定よりも1回少ない、2回の軌道修正操作を実施して月周回軌道へ投入され、高度92kmの円軌道を周回しました。Nova-Cに搭載されているカメラは、月周回軌道投入後に月面を撮影し、その写真が公開されました。

関連記事:米民間企業の月着陸船「Nova-C」月周回軌道に到着 2月23日朝に着陸予定(2024年2月22日)

<月着陸>

日本時間2024年2月23日8時24分、Nova-Cは月の南極近くにあるマラパートA・クレーター(Malapert A、直径33km)への軟着陸に成功しました。

【▲ 月着陸船「Nova-C」に搭載されているカメラで撮影された月面の様子。このカメラは機体の上部から下部を見下ろすように取り付けられているが、Nova-Cは月面で横転した状態のため月の地平線が写っている(Credit: Intuitive Machines)】
【▲ 月着陸船「Nova-C」に搭載されているカメラで撮影された月面の様子。このカメラは機体の上部から下部を見下ろすように取り付けられているが、Nova-Cは月面で横転した状態のため月の地平線が写っている(Credit: Intuitive Machines)】

Nova-Cは最終的に横転した姿勢で安定した状態で月着陸をしています。このような姿勢は、降下時に高度を測定するデータを欠いたまま降下することになり、当初の計画を上回る速度で着地したため、Nova-Cの着陸脚の一部を損傷したことが原因です。

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<活動終了へ>

【▲ 月着陸船「Nova-C」に搭載されているカメラで米国現地時間2024年2月22日に撮影された画像。月の地平線上には輝く太陽とその左に三日月状の地球が映っている(Credit: Intuitive Machines)】
【▲ 月着陸船「Nova-C」に搭載されているカメラで米国現地時間2024年2月22日に撮影された画像。月の地平線上には輝く太陽とその左に三日月状の地球が映っている(Credit: Intuitive Machines)】

日本時間2024年3月1日朝、インテュイティブ・マシーンズは月面で活動を行うNova-Cについて最新情報を発表しました。着陸地点が夜を迎えるため、Nova-Cは活動を終えます。月面は昼間約110℃、夜間約マイナス170℃という温度差のある厳しい環境です。そのため電子機器を損傷させる可能性もあります。しかしインテュイティブ・マシーンズはNova-Cの電子機器やバッテリーが2週間続く月の夜の寒さに耐えられる可能性を考慮し、着陸地点が昼を迎えたNova-Cと再び交信できるように備えているということです。

 

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文/出口隼詩 編集/sorae編集部