日本時間2024年2月23日8時23分、米国の民間宇宙企業インテュイティブ・マシーンズ(Intuitive Machines)の月着陸船「Nova-C(ノヴァC)」が月着陸に成功しました。米国としては1972年12月に実施されたアポロ17号以来51年2か月ぶり、民間企業としては世界初の月着陸(軟着陸)です。この記事ではNova-Cによる初の月着陸ミッション「IM-1」の打ち上げから月着陸、そして活動終了までを振り返ります。
<ミッションの概要>
「Odysseus(オデュッセウス)」と命名されたNova-Cによる月着陸ミッション「IM-1」はインテュイティブ・マシーンズ初の月着陸ミッションです。2013年に設立された同社は米国テキサス州ヒューストンに本社があります。
IM-1の特色はアメリカ航空宇宙局(NASA)の商業月輸送サービス(CLPS)の下で選定された6つのペイロードを搭載していることで、インテュイティブ・マシーンズは月までペイロードを運搬するサービスを請け負いました。Nova-CにはNASAのペイロードだけでなく、民間企業や大学からの6つのペイロードも搭載されています。
<打ち上げ>
Nova-Cは日本時間2024年2月15日15時5分(米国東部標準時同日1時5分)、スペースXの「ファルコン9」ロケットに搭載されて、米国フロリダ州のケネディ宇宙センター39A射点から打ち上げられました。発射48分後に月遷移軌道(LTO:lunar transfer orbit)への投入に成功。Nova-Cは日本時間2月17日までに主エンジンの点火試験に成功し、月周回軌道への投入に向けた大きなマイルストーンを達成しました。
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<月周回軌道への投入>
インテュイティブ・マシーンズは日本時間2024年2月22日0時22分付で、Nova-Cを月周回軌道へ投入することに成功したと発表しました。Nova-Cは当初の予定よりも1回少ない、2回の軌道修正操作を実施して月周回軌道へ投入され、高度92kmの円軌道を周回しました。Nova-Cに搭載されているカメラは、月周回軌道投入後に月面を撮影し、その写真が公開されました。
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<月着陸>
日本時間2024年2月23日8時24分、Nova-Cは月の南極近くにあるマラパートA・クレーター(Malapert A、直径33km)への軟着陸に成功しました。
Nova-Cは最終的に横転した姿勢で安定した状態で月着陸をしています。このような姿勢は、降下時に高度を測定するデータを欠いたまま降下することになり、当初の計画を上回る速度で着地したため、Nova-Cの着陸脚の一部を損傷したことが原因です。
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<活動終了へ>
日本時間2024年3月1日朝、インテュイティブ・マシーンズは月面で活動を行うNova-Cについて最新情報を発表しました。着陸地点が夜を迎えるため、Nova-Cは活動を終えます。月面は昼間約110℃、夜間約マイナス170℃という温度差のある厳しい環境です。そのため電子機器を損傷させる可能性もあります。しかしインテュイティブ・マシーンズはNova-Cの電子機器やバッテリーが2週間続く月の夜の寒さに耐えられる可能性を考慮し、着陸地点が昼を迎えたNova-Cと再び交信できるように備えているということです。
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文/出口隼詩 編集/sorae編集部