アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間2023年10月11日、小惑星探査ミッション「OSIRIS-REx(オシリス・レックス、オサイリス・レックス)」で地球に持ち帰られた小惑星「101955 Bennu(ベンヌ、ベヌー)」のサンプルをジョンソン宇宙センターからのライブ配信を通して初公開しました。【2023年10月13日10時】
サンプルの公開にあわせてNASAからリリースされたこちらの画像、大きく写っている円筒形の物体はOSIRIS-REx探査機のロボットアーム先端に取り付けられていたサンプル採取装置「TAGSAM(Touch-And-Go Sample Acquisition Mechanism)」です。中央の開口部に見えている砕けた炭のような物質が、ベンヌの表面から採取された砂や小石サイズのサンプルです。
2016年9月に打ち上げられたOSIRIS-REx探査機は2018年12月にベンヌに到着。周回軌道上からの観測を重ねた後の日本時間2020年10月21日に表面からのサンプル採取を実施し、2021年5月にベンヌを出発しました。サンプルを収めた回収カプセルは日本時間2023年9月24日に探査機本体から分離されて地球の大気圏に再突入し、日本時間同日23時52分に米国ユタ州のユタ試験訓練場へ着陸することに成功していました。
【▲ OSIRIS-RExのカメラ「SamCam」で撮影されたサンプル採取前後5分間の画像から作成されたアニメーション(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)】
サンプルの採取当日、探査機はロボットアームを伸ばしてベンヌの表面へと降下。先端の採取装置が接触すると同時に窒素ガスを噴射させることで、表面から舞い上がった物質を採取装置の内部に捉えました。採取装置は2020年10月30日にロボットアームから切り離され、回収カプセル内部のサンプル容器に収容。2023年9月26日にジョンソン宇宙センターで開封作業が行われるまで、採取装置は3年近くサンプル容器に保管されていました。
関連:NASA小惑星探査OSIRIS-RExミッションのサンプル容器開封進む 黒いダスト現る(2023年9月29日)
NASAによると、サンプル容器の開封から2週間以内に行われた最初の分析の結果、ベンヌのサンプルに豊富な炭素と水が含まれている証拠が得られました。OSIRIS-RExミッションの主任研究員を務めるアリゾナ大学のDante Laurettaさんは、豊富な炭素を含む物質や水を含む豊富な粘土鉱物の存在は宇宙という氷山の一角に過ぎず、ベンヌのサンプルは近隣の天体のみならず生命の起源をも理解する旅へと私たちを駆り立てるとコメントしています。
OSIRIS-RExミッションでは少なくとも60グラムのサンプルをベンヌで採取し地球に持ち帰ることが計画されていましたが、NASAによれば実際に採取されたサンプルは約250グラムと予測されています(サンプル採取前後のロボットアームの動きを比較して推定)。正確に何グラムのサンプルが手に入ったのかは2023年10月11日の時点でもまだ判明していませんが、Laurettaさんは大量のサンプルを前に私たちは興奮しているともコメントしています。
なお、取り出されたベンヌのサンプルは世界各国の研究者に配分されて分析が進められることになります。日本は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」のミッションで採取・回収された小惑星「162173 Ryugu(リュウグウ)」のサンプルの一部とベンヌのサンプルの一部をそれぞれ提供し合う交換協定を結んでおり、ベンヌのサンプルは日本の研究チームにも配分されることになります。また、サンプルのうち70パーセントは将来の研究者へ託すために保存されるということです。
Source
- NASA - NASA’s Bennu Asteroid Sample Contains Carbon, Water
文/sorae編集部