北朝鮮当局から海上保安庁に対して、2023年8月24日から8月31日までの間に「人工衛星の打ち上げ」を実施するという通報があったことをNHKなどが報じています。2023年に入って北朝鮮が衛星の打ち上げ期間を予告したのは5月に続き、今回で2回目です。【2023年8月22日10時】
海上保安庁の「海の安全情報」ウェブサイトでは、黄海・東シナ海・ルソン島(フィリピン)東の3か所の海域に関する「衛星ロケット打ち上げ」の情報が、8月22日4時50分付の緊急情報として掲載されています。期間は日本時間8月24日0時~8月31日0時です。
同庁が提供している日本航行警報(太平洋、インド洋及び周辺諸海域を航行する日本船舶に対する緊急に必要な情報)を参照すると、黄海と東シナ海の境界付近に計2か所と、フィリピン東方の太平洋に1か所、合計3か所の海域を確認することができます。
通報された海域は2023年5月に北朝鮮が実施した「千里馬(チョルリマ)1型」ロケットの打ち上げ時と同じです。千里馬1型は軍事偵察衛星「万里鏡(マルリギョン)1号」の軌道投入を目的に日本時間2023年5月31日6時27分に北朝鮮の西海(ソヘ)衛星発射場から発射されたものの、第2段エンジンに異常が生じたため黄海(朝鮮西海)に墜落したとされていました。5月の打ち上げ失敗直後、国家宇宙開発局は原因解明に着手するとともに2回目の発射を早期に断行すると表明しており、今回も同様の打ち上げが実施されるものと推定されます。
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北朝鮮は人工衛星を搭載したロケットの打ち上げを2016年までに4回行ってきました。前回に引き続き今回も軍事偵察衛星の打ち上げを目指している場合、地球観測衛星や偵察衛星で利用される極軌道への投入が行われるものとみられます。
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東西冷戦期の米ソ宇宙開発競争で大陸間弾道ミサイルが人工衛星や有人宇宙船の打ち上げに転用されたように、大陸間弾道ミサイルと衛星打ち上げ用のロケットは表裏一体なシステムでもあります。しかし、地下核実験やミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮に対して、国連安全保障理事会は弾道ミサイル技術を使用した発射をはじめ、弾道ミサイルおよび核関連活動の停止・計画の放棄を安保理決議で義務付けています。
首相官邸によると、今回の打ち上げ予告を受けて岸田総理は「関係省庁間で協力し、情報の収集・分析に万全を期し、国民に対して、適切に情報提供を行うこと」「米国や韓国等関係諸国と連携し、北朝鮮が発射を行わないよう、強く中止を求めること」「不測の事態に備え、万全の態勢をとること」を8月22日3時55分に指示しました。また、前回の打ち上げ予告を受けて防衛省は弾道ミサイル等に対する破壊措置命令を5月29日に発出しましたが、早期に2回目の打ち上げが想定されたことから、現在も破壊措置命令が維持されています。
Source
- Image Credit: 海上保安庁, 朝鮮中央通信
- 海上保安庁 - 海の安全情報
- 海上保安庁 - 日本航行警報
- 首相官邸 - 北朝鮮による衛星を発射する旨の通報に関する総理指示
- 防衛省 - 弾道ミサイル等に対する破壊措置の実施に関する自衛隊行動命令の一部変更について
文/sorae編集部