アメリカ航空宇宙局(NASA)は8月8日付で、アメリカの航空大手ボーイングが開発中の新型宇宙船「スターライナー(CST-100 Starliner)」による有人飛行試験ミッション「CFT(Crew Flight Test)」について、2024年3月以降に実施される見込みであることを明らかにしました。【2023年8月9日12時】

【▲ ボーイングの新型宇宙船「スターライナー」、有人飛行試験「CFT」で使用される機体の組み立て作業の様子。2023年1月19日撮影(Credit: Boeing/John Grant)】
【▲ ボーイングの新型宇宙船「スターライナー」、有人飛行試験「CFT」で使用される機体の組み立て作業の様子。2023年1月19日撮影(Credit: Boeing/John Grant)】

スターライナーはスペースXの「クルードラゴン」とともに、NASAのコマーシャルクループログラム(商業乗員輸送計画)のもとで開発がスタートした有人宇宙船です。初飛行として2019年12月に実施された無人飛行試験ミッション「OFT」ではソフトウェアの問題が生じたために計画されていた軌道へ入ることができず、スターライナーはISSへの到達を断念して地球に帰還。2022年5月には2回目の無人飛行ミッション「OFT-2」が実施され、ISSへのドッキングを含む打ち上げから帰還までの実証試験に成功しています。

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2度の無人飛行試験に成功したスターライナーは、本格的な有人飛行の開始に先立ち、実際にクルーが搭乗するCFTの実施を控えています。CFTではNASAのバリー・ウィルモア(Barry Wilmore)宇宙飛行士とスニータ・ウィリアムズ(Sunita Williams)宇宙飛行士がプライムクルーに、マイケル・フィンク(Edward Michael Fincke)宇宙飛行士がバックアップクルーに任命されています。

2023年4月の時点ではCFTの実施は同年7月21日以降に予定されていましたが、2つの問題が発覚したことで同年6月に延期が発表されました。1つ目はパラシュートの問題で、サスペンションライン(吊索)と機体を繋ぐソフトリンクと呼ばれる部品の強度の分析に誤りがあり、帰還時に展開される3つのパラシュートのうち1つが何らかの理由で失われた際に、残る2つのパラシュートのソフトリンクに求められる安全マージンが確保できていなかった模様です。2つ目はワイヤーハーネスを結束・保護するために機体全体で使われているテープの問題で、試験の結果、粘着剤が可燃性だったことが判明したとされていました。

【▲ 無人のOFT-2ミッションを終えてホワイトサンズ宇宙港に着陸する新型宇宙船「スターライナー」(Credit: NASA/Bill Ingalls)】
【▲ 無人のOFT-2ミッションを終えてホワイトサンズ宇宙港に着陸する新型宇宙船「スターライナー」(Credit: NASA/Bill Ingalls)】

問題が判明したソフトリンクとテープは2022年5月のOFT-2でも使用されていましたが、この時は特に異常が生じるようなことはなかったといいます。SpaceNewsなど海外メディアの報道によると、ボーイングでスターライナーのプロジェクトを担当するMark Nappi副社長は、これらの問題がCFTの実施直前になってから見つかった理由について、設計の初期段階における「ある種の楽観的な意識」だったと説明していました。

関連:ボーイングの新型宇宙船「スターライナー」有人飛行試験延期 新たな問題が発覚(2023年6月2日)

延期されたCFTの実施が2024年3月以降になるという見通しは、現地時間2023年8月7日にNASAが開催したメディアブリーフィングおよび同日付のプレスリリースで発表されました。SpaceNewsによると、問題点の1つであるパラシュートのソフトリンクは設計を改めた上で現在試験が進められていることが、コマーシャルクループログラムのマネージャーを務めるNASAのSteve Stich氏から明らかにされました。またNappi氏によれば2023年11月後半には降下試験も実施される予定です。

もう1つの問題点であるテープは全体の約85パーセントが除去されたものの、Nappi氏によると一部に除去することが難しいテープもあり、場合によっては損傷を招く可能性もあることから、場所に応じてテープをコーティングしたり別のテープを巻き付けたりといった可燃性を軽減するための措置が講じられる模様です。問題のテープは環境によっては可燃性があるということですが、Stich氏によればNASAのデータベースにおけるテープの可燃性に関する項目は「少し矛盾していて」、そのことが危険性のある環境での使用に結び付いたと説明されています。

ただ、仮に2024年3月の段階でスターライナーの打ち上げ準備が整ったとしても、ISSに飛行する他の宇宙船のスケジュールとの兼ね合いもあるため、すぐにCFTが実施されるとは限りません。例年3月はロシアの宇宙船「ソユーズ」によるISS長期滞在クルーの交代が行われる時期であるため、CFTは2024年4月以降にずれ込む可能性もあります。SpaceNewsによれば、Stich氏は運用飛行の開始について判断するのは時期尚早だとしつつも、2024年末頃もあり得ると言及した上で、できるだけ早く飛行させたいとコメントしています。

 

Source

  • Image Credit: Boeing/John Grant, NASA/Bill Ingalls
  • NASA - NASA, Boeing Provide Update on Starliner Crew Flight Test
  • SpaceNews - First Starliner crewed flight delayed to 2024

文/sorae編集部

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