アメリカ航空宇宙局(NASA)は5月12日付で、2022年12月に打ち上げられた小型探査機「ルナー・フラッシュライト(Lunar Flashlight)」のミッションを終了すると発表しました。【2023年5月15日13時】

【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)の小型探査機「ルナー・フラッシュライト」の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】
【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)の小型探査機「ルナー・フラッシュライト」の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

ルナー・フラッシュライトはNASAのジェット推進研究所(JPL)が開発した靴箱サイズの小型探査機(CubeSat規格の6Uサイズ)です。同探査機のミッションは月の南極付近の永久影(太陽光が常に届かない領域)に埋蔵されているとみられる水の氷のマッピングと新技術のデモンストレーションを兼ねており、氷に吸収されやすい近赤外線を利用するレーザー反射率計が観測装置として搭載されていました。

2022年12月11日(日本時間)、ルナー・フラッシュライトは株式会社ispaceの民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1のランダーとともにスペースXの「ファルコン9」ロケットに相乗りして打ち上げられ、月へ向かう軌道に投入されました。

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関連:スペースX、ispaceの月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1ランダーとNASAの小型探査機を打ち上げ(2022年12月11日)

ロケットから切り離されたルナー・フラッシュライトは自身のスラスターを使って軌道を修正し、月の南極上空では高度15km・反対側では高度7万kmを飛行する非常に細長い楕円軌道(Near Rectilinear Halo Orbit:NRHO、月長楕円極軌道)に入る予定でした。しかし打ち上げから3日後、搭載されている4基のスラスターのうち3基で性能の低下が判明していました。JPLによると、スラスターの性能低下は何らかの異物(金属粉など)が推進剤の供給ラインを詰まらせたために生じた可能性が考えられるようです。

運用チームは残る1基のスラスターを使って月ではなく地球を周回する軌道にルナー・フラッシュライトを投入し、月の南極上空を1か月ごとに通過させることも検討しました(本来の月周回軌道に投入できた場合は1週間ごと)。供給ラインに通常よりも高い圧力を加えて異物を取り除く試みでは限定的ながらも推力回復の効果が得られたものの、タイムリミットまでに軌道修正を行うことはできず、探査機を地球-月系に留まらせることができないことから、NASAはミッションの終了を宣言しました。

【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)の小型探査機「ルナー・フラッシュライト」(Credit: NASA/JPL-Caltech)】
【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)の小型探査機「ルナー・フラッシュライト」(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

なお、ルナー・フラッシュライトのスラスターには「ASCENT」(Advanced Spacecraft Energetic Non-Toxicの略)と呼ばれる一液式の自己着火性推進剤が採用されました。NASAによればASCENTは手袋やゴーグルといった比較的簡単な保護具で取り扱うことが可能で、従来広く用いられてきたものの毒性が強いヒドラジンを代替する可能性もあるといいます。ASCENTが地球周回軌道よりも遠くで使用されたのは今回のミッションが初めてだとされています。

JPLによると、5月12日の時点でルナー・フラッシュライトは地球へ引き返すように飛行しており、5月17日に約6万5000kmまで接近した後は地球を離れ、太陽を周回する人工惑星になります。探査機との通信は確立されており、NASAは将来の選択肢を検討しているということです。

 

Source

  • Image Credit: NASA/JPL-Caltech
  • NASA/JPL - NASA Calls End to Lunar Flashlight After Some Tech Successes
  • NASA - Small Satellite Missions (NASA Blogs)
  • NASA - NASA’s Lunar Flashlight Team Assessing Spacecraft’s Propulsion System
  • NASA - NASA’s Green Propellant Infusion Mission Nears Completion

文/sorae編集部

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