こちらは米国フロリダ州のケネディ宇宙センターにあるマルチペイロード処理施設(MPPF)で2023年1月6日に撮影された画像です。外装の一部が取り外されている画像中央の機体は、アメリカ航空宇宙局(NASA)の月面探査計画「アルテミス」最初のミッション「アルテミス1」で飛行した「Orion(オリオン、オライオン)」宇宙船のクルーモジュールです。
オリオンはアルテミス計画や将来の有人火星探査を想定してNASAが開発した宇宙船です。アルテミス1ミッションで無人飛行試験を行うため2022年11月16日に新型ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」初号機で打ち上げられたオリオン宇宙船は、2022年12月12日に25日半に渡るミッションを終えて地球に帰還しました。
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米海軍の輸送揚陸艦「ポートランド(USS Portland)」に収容されたオリオン宇宙船のクルーモジュールは、12月14日にカリフォルニア州のサンディエゴ海軍基地で陸揚げされた後に陸路で輸送され、12月30日にケネディ宇宙センターのマルチペイロード処理施設へ到着しました。
アルテミス1は無人のミッションでしたが、NASAは今後のミッションに備えて、人体への宇宙放射線の影響を測定するためのマネキンや人体模型をオリオンに搭載していました。また、半世紀前のアポロ計画の頃からNASAとのつながりが深いスヌーピーや、欧州宇宙機関(ESA)が選定したショーン(「ひつじのショーン」の主人公)のぬいぐるみも無重力インジケーター(※)として搭載されていました。次の画像に写っているのはアルテミス1のオリオン宇宙船に搭載されて打ち上げられ、ミッションを終えて帰還したスヌーピーのぬいぐるみです。
※…無重力状態になったことを視覚的に示すために宇宙船に積み込まれるマスコットのこと。ゼロGインジケーターとも。
ケネディ宇宙センターではクルーモジュール各部の検査や搭載物の取り出しなどの作業が進められています。NASAによると、人間の全身を模したマネキン「Campos(カンポス)」を搭載するために使用されたシート、GPS受信機やビデオ処理ユニットといった一部のアビオニクスなどは、改修後に次のミッション「アルテミス2」でも使用されるということです。
アルテミス2は有人での試験飛行にあたるミッションで、月着陸は行われませんが、SLSで打ち上げられたオリオン宇宙船は月の裏側へ回った後に地球へ帰還します。アルテミス2ミッションの実施は2024年5月に予定されています。また、およそ半世紀ぶりの有人月面探査ミッションとして2名の男女が月の南極付近に降り立つ「アルテミス3」は、2025年に実施される予定です。
Source
- Image Credit: NASA/Ben Smegelsky/Isaac Watson/Skip Williams
- NASA - Inspecting Orion
- NASA - Snoopy Returns from Artemis I Mission
- NASA - Heat Shield Inspections Underway on Artemis I Orion Spacecraft
- NASA - Artemis (NASA Blogs)
文/sorae編集部