今年も宇宙開発や天文学に関する注目のニュースが相次ぎました。2022年にsoraeがお伝えしたニュースのなかから注目すべきニュースを3つの話題でピックアップしてご紹介。今回は前半の「宇宙開発ニュース編」です!

※本記事は2021年12月26日時点での情報をもとにしています

>> 2022年に注目された「宇宙天文ニュース」~後半:天文ニュース編~

■「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡が科学観測を開始

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の想像図

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の想像図(Credit: NASA GSFC/CIL/Adriana Manrique Gutierrez)】

今年は期待の新型宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」による科学観測がついに始まりました。六角形の鏡を18枚組み合わせた直径6.5mの主鏡を備えたウェッブ宇宙望遠鏡は、初期宇宙で誕生した宇宙最初の世代の星(初期星、ファーストスター)や最初の世代の銀河の観測、太陽系外惑星の大気観測などを通して宇宙の謎に迫ることが世界中の研究者から期待されてきた、アメリカ航空宇宙局(NASA)・欧州宇宙機関(ESA)・カナダ宇宙庁(CSA)の赤外線宇宙望遠鏡です。

【▲ 「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡を搭載してギアナ宇宙センターから打ち上げられた「アリアン5」ロケット(Credit: ESA/CNES/Arianespace)】

【▲ 「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡を搭載してギアナ宇宙センターから打ち上げられた「アリアン5」ロケット(Credit: ESA/CNES/Arianespace)】

2021年のクリスマスにギアナ宇宙センターから打ち上げられたウェッブ宇宙望遠鏡は、折りたたまれていたサンシールド(日除け)、主鏡、副鏡などを順番に展開しつつ、打ち上げ1か月後の2022年1月25日(日本時間・以下同様)に地球と太陽のラグランジュ点のひとつ「L2」(地球からの距離は約150万km)を周回するように見える軌道(ハロー軌道)へと入ることに成功。主鏡を構成する18枚のミラーセグメントや観測機器の調整が半年ほどかけて実施されました。

【▲ ウェッブ宇宙望遠鏡の軌道を説明した動画。L2を大きく周回するような軌道を描くことがわかる】
(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)

そして2022年7月12日には、ウェッブ宇宙望遠鏡を使って取得された4つの天体の高解像度画像と分光観測データが初めて公開されました。7月の科学観測開始からまだ半年も経っていませんが、すでにウェッブ宇宙望遠鏡は観測史上最遠の銀河の記録を塗り替えるなどの成果をあげています。

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が科学観測で取得した高解像度赤外線画像の数々(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, and the Webb ERO Production Team)】
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【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が科学観測で取得した高解像度赤外線画像の数々(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, and the Webb ERO Production Team)】

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※ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測については「後半:天文ニュース編」でもお伝えします。

■SLS&オリオン宇宙船の無人飛行試験ミッション「アルテミス1」

【▲ アルテミス1ミッション6日目にオリオン宇宙船のカメラで撮影された月と地球(Credit: NASA)】

【▲ アルテミス1ミッション6日目にオリオン宇宙船のカメラで撮影された月と地球(Credit: NASA)】

今年は半世紀ぶりの有人月面探査に向けた重要なミッションも行われました。2022年11月16日、NASAは有人月面探査計画「アルテミス」最初のミッション「アルテミス1」の打ち上げを実施。新型宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」を搭載した新型ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」は初飛行に成功しました。

【▲ ケネディ宇宙センター39B射点から打ち上げられたSLS初号機(Credit: NASA/Bill Ingalls)】

【▲ ケネディ宇宙センター39B射点から打ち上げられたSLS初号機(Credit: NASA/Bill Ingalls)】

アルテミス1はSLSとオリオン宇宙船の無人飛行試験を行うためのミッションです。無人のオリオン宇宙船の船内には後のミッションでの有人飛行に備えて、人体への宇宙放射線の影響を測定するためのマネキンや人体模型が搭載されました。

【▲ オリオン宇宙船の船内の様子。左の座席に座っているのはマネキンの「カンポス」(Credit: NASA)】

【▲ オリオン宇宙船の船内の様子。左の座席に座っているのはマネキンの「カンポス」(Credit: NASA)】

カウントダウン中のトラブルや相次ぐハリケーン接近にともなう4回の延期の後に打ち上げられたオリオン宇宙船は、月周回軌道を飛行中の2022年11月29日6時すぎに地球から26万8563マイル(約43万2210km)のポイントに到達し、「有人飛行用に設計された宇宙船が到達した最遠距離」の記録を更新。12月12日2時40分頃に太平洋へ無事着水しました。

【▲ アルテミス1ミッションにおけるオリオン宇宙船の軌道(月の公転運動を追尾する視点)。青は地球、白は月、赤はオリオン宇宙船を示す。オリオン宇宙船は月の公転方向に逆行するような周回軌道を半周する。なお、月が左右に往復しているのは地球からの距離が周期的に変化するためで、地球に近づくタイミングの満月はいわゆるスーパームーンと呼ばれる(Credit: ESA)】

【▲ アルテミス1ミッションにおけるオリオン宇宙船の軌道(月の公転運動を追尾する視点)。青は地球、白は月、赤はオリオン宇宙船を示す。オリオン宇宙船は月の公転方向に逆行するような周回軌道を半周する。なお、月が左右に往復しているのは地球からの距離が周期的に変化するためで、地球に近づくタイミングの満月はいわゆるスーパームーンと呼ばれる(Credit: ESA)】

アルテミス計画における次のミッション「アルテミス2」では、いよいよ宇宙飛行士がオリオン宇宙船に実際に搭乗します。このミッションではまだ月着陸は行われませんが、有人のオリオン宇宙船は月周辺を飛行してから地球へ帰還します。アルテミス2ミッションは2024年5月に実施される予定です。

【▲ 25日半に渡る無人飛行を終えて帰還したオリオン宇宙船のクルーモジュール(Credit: NASA)】

【▲ 25日半に渡る無人飛行を終えて帰還したオリオン宇宙船のクルーモジュール(Credit: NASA)】

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なお、アルテミス1ミッションでは日本の「EQUULEUS(エクレウス)」と「OMOTENASHI(オモテナシ)」をはじめとする10機の小型探査機もSLSに相乗りして打ち上げられました。水を推進剤として噴射するEQUULEUSは初期運用フェーズを無事終えて飛行を続けていますが、OMOTENASHIはSLSから放出後の姿勢制御を計画通りに行うことができず、目標の月面着陸を断念しています。

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■史上初の小惑星軌道変更ミッション「DART」

【▲ 小惑星ディディモス(右上)の衛星ディモルフォス(左)へ接近した探査機「DART」の想像図。右下に描かれているのは衝突前に分離される小型探査機「LICIACube」(Credit: NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben)】

【▲ 小惑星ディディモス(右上)の衛星ディモルフォス(左)へ接近した探査機「DART」の想像図。右下に描かれているのは衝突前に分離される小型探査機「LICIACube」(Credit: NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben)】

今年は将来起こり得る地球への天体衝突に備えたミッションも実施されています。2022年9月27日8時14分、ジョンズ・ホプキンス大学の応用物理学研究所(APL)が主導するNASAのミッション「DART」の探査機が、小惑星「ディディモス」(65803 Didymos、直径780m)とその衛星「ディモルフォス」(Dimorphos、直径160m)からなる二重小惑星のうち、衛星であるディモルフォスに衝突することに成功しました。

【▲ NASAの探査機「DART」の光学カメラ「DRACO」で撮影された小惑星ディモルフォス。衝突の11秒前、68km手前から撮影されたもので、ディモルフォスの全体を捉えた最後の画像(Credit: NASA/Johns Hopkins APL)】

【▲ NASAの探査機「DART」の光学カメラ「DRACO」で撮影された小惑星ディモルフォス。衝突の11秒前、68km手前から撮影されたもので、ディモルフォスの全体を捉えた最後の画像(Credit: NASA/Johns Hopkins APL)】

2021年11月24日に探査機が打ち上げられたDART(Double Asteroid Redirection Test、二重小惑星方向転換試験の略)は、惑星防衛(※)の一環として、衝突体(インパクター)を体当たりさせて小惑星の軌道を変える「キネティックインパクト」(kinetic impact)と呼ばれる手法を初めて実証するために実施されたミッションです。

※…深刻な被害をもたらす天体衝突を事前に予測し、将来的には小惑星などの軌道を変えて災害を未然に防ぐための取り組みのこと。プラネタリーディフェンス

地球に衝突する確率が高いと判断された小惑星の軌道を変更すれば、甚大な被害をもたらす衝突を回避できる可能性があります。10年ほど前の2013年2月にロシア上空で爆発して1000名以上を負傷させた小惑星のように、地球への天体衝突は現実の脅威なのです。

【▲ ASIの小型探査機「LICIACube」が撮影したディモルフォスへのDART探査機衝突時の様子(Credit: ASI/NASA)】

【▲ ASIの小型探査機「LICIACube」が撮影したディモルフォスへのDART探査機衝突時の様子(Credit: ASI/NASA)】

DART探査機がディモルフォスに衝突した瞬間やその後の様子は、宇宙や地上から観測されました。衝突の15日前にDART探査機から放出されたイタリア宇宙機関(ASI)の小型探査機「LICIACube」は、二重小惑星とすれ違いながら衝突の瞬間を間近で撮影しました。また、「ハッブル」宇宙望遠鏡や「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡、地上の望遠鏡などはディモルフォスから放出された噴出物が広がり、尾のように長く伸びた様子を捉えています。

【▲ セロ・トロロ汎米天文台のSOAR望遠鏡でDART探査機の衝突2日後に撮影された、ディモルフォスからの噴出物の様子(Credit: CTIO/NOIRLab/SOAR/NSF/AURA/T. Kareta (Lowell Observatory), M. Knight (US Naval Academy); Image Processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab))】

【▲ セロ・トロロ汎米天文台のSOAR望遠鏡でDART探査機の衝突2日後に撮影された、ディモルフォスからの噴出物の様子(Credit: CTIO/NOIRLab/SOAR/NSF/AURA/T. Kareta (Lowell Observatory), M. Knight (US Naval Academy); Image Processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab))】

NASAは10月12日に、DART探査機の衝突によってディモルフォスの公転周期が11時間55分から32分短い11時間23分に変化したことが確認されたと発表しました。衝突後のディモルフォスの様子はESAの小惑星探査機「Hera」(ヘラ、2024年10月打ち上げ予定)による観測が計画されています。DARTミッションで変更されたのは地球への脅威とはならない小惑星の衛星の軌道ですが、この経験は将来の惑星防衛ミッションに活かされることになります。

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【▲ 欧州宇宙機関の二重小惑星探査ミッション「Hera」のイメージ図。Hera探査機(中央)と小型探査機「Milani」(右下)および「Juventas」(右上)が描かれている(Credit: ESA/Science Office)】

【▲ 欧州宇宙機関の二重小惑星探査ミッション「Hera」のイメージ図。Hera探査機(中央)と小型探査機「Milani」(右下)および「Juventas」(右上)が描かれている(Credit: ESA/Science Office)】

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■2022年その他の注目ニュース

【▲ ファルコン9ロケットのフェアリングに格納される「HAKUTO-R」ミッション1の月着陸船(ランダー)(Credit: ispace)】

【▲ ファルコン9ロケットのフェアリングに格納される「HAKUTO-R」ミッション1の月着陸船(ランダー)(Credit: ispace)】

2022年12月11日、日本の民間企業ispaceによる月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1のランダー(月着陸船)などを乗せたスペースXの「ファルコン9」ロケットが、ケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられました。無人のHAKUTO-Rミッション1ランダーは2023年4月の月面着陸を目指して飛行を続けており、成功すれば日本初、また民間企業として世界初の月面着陸となります。

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そのスペースXが提供する衛星ブロードバンド「スターリンク」は、2022年10月から日本国内でも利用できるようになりました。2022年12月26日時点では南西諸島の一部(奄美大島以南)を除いた日本全国で利用可能とされています。スターリンクは地球低軌道を周回する多数の衛星で構築された衛星コンステレーションを使って提供されており、12月18日までに打ち上げられたスターリンク衛星の総数は3612機になりました。

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スペースXと並びハイペースでロケットが打ち上げられている中国では今年、独自に建設が進められていた宇宙ステーション「天宮」の2つの実験モジュール「問天」「夢天」の打ち上げが実施されました。2つのモジュールがコアモジュール「天和」に結合されたことで、天宮宇宙ステーションは主な構成要素の打ち上げと組み立てが完了。中国では初となる6名の宇宙飛行士の同時滞在も行われました。

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いっぽう、2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの侵攻は、宇宙開発や宇宙探査の分野にも影響を及ぼしています。2022年9月には欧州とロシアが共同で実施している火星探査ミッション「エクソマーズ」2回目の打ち上げが行われる予定でしたが、2022年3月に中止が決定。衛星通信会社「OneWeb(ワンウェブ)」のロシアからの衛星打ち上げも中断し、後にインドやアメリカのロケットを使って打ち上げが再開されました。

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また、2022年10月12日に鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から日本の「イプシロンロケット」6号機が打ち上げられましたが、第2段で異常が発生したために指令破壊信号が送信され、打ち上げは失敗しました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は原因究明を進めています。

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文/sorae編集部

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