火星サンプルリターン計画の一環として火星探査車「Perseverance」から初めて投下されたサンプル保管容器

【▲ 火星サンプルリターン計画の一環として火星探査車「Perseverance」から初めて投下されたサンプル保管容器(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は12月21日、火星探査車「Perseverance(パーシビアランス)」から火星の岩石などのサンプルを収めた保管容器の1つを投下することに成功したと発表しました。NASAは1か月間で合計10本の保管容器を火星表面に配置する予定です。

NASAと欧州宇宙機関(ESA)は現在、火星の表面で採取したサンプルを地球に持ち帰る「火星サンプルリターン(Mars Sample Return)」計画を共同で計画・実施しています。これまで火星の岩石は隕石として地球に飛来したもの(火星隕石)を調べるか、あるいは火星探査機・火星探査車に搭載された装置を使って現地で採取・分析することしかできませんでした。米欧の火星サンプルリターン計画が成功すれば、火星で直接採取されたサンプルが初めて地球にもたらされることになります。

【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)による「火星サンプルリターン計画」のイメージ図(Credit: NASA/ESA/JPL-Caltech)】

【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)による「火星サンプルリターン計画」のイメージ図(Credit: NASA/ESA/JPL-Caltech)】

Advertisements

火星サンプルリターン計画は「火星でのサンプル採取」「サンプルの回収と打ち上げ」「サンプルを地球へ輸送」という三段構えのミッションで構成されています。このうち第1段階となる「火星でのサンプル採取」はNASAの火星探査ミッション「Mars 2020(マーズ2020)」のもとで、2021年2月にジェゼロ・クレーターに着陸したPerseveranceによって今まさに進められています。

関連:採取成功! NASA探査車Perseveranceが将来地球で分析される火星の岩石サンプルを初採取

Perseveranceには採取したサンプルを保管するためのチューブ状の容器が合計43本搭載されています。計画ではこのうち30本ほどにサンプルが密封される予定で、これまでに18本の保管容器が密封済みです(大気のサンプルを収めた1本を含む)。

【▲ 火星サンプルリターン計画のイメージ動画】
(Credit: NASA/ESA/JPL-Caltech/GSFC/MSFC)

Perseveranceが採取したサンプルは、NASAの着陸機「SRL」が担当する第2段階「サンプルの回収と打ち上げ」のミッションで回収され、小型ロケット「MAV」を使って火星の周回軌道へ打ち上げられます。軌道上には第3段階「サンプルを地球へ輸送」のミッションを担当するESAの探査機「ERO」が待ち構えていて、MAVから放出されたサンプル入りの球形コンテナをキャッチ。コンテナはEROに搭載されている回収カプセルに収容され、地球に運ばれるという流れです(※)

※…SRL:Sample Retrieval Lander(サンプル回収ランダー)、MAV:Mars Ascent Vehicle(火星上昇機)、ERO:Earth Return Orbiter(地球帰還オービター)

サンプルを収めた保管容器の回収方法は2通りが計画されています。1つはPerseverance自身が保管容器を運んで着陸機SRLに渡す方法、もう1つはバックアップとして地表に投下された保管容器をロボットアーム付きの小型ヘリコプターで拾い集める方法です。上に掲載した動画ではPerseveranceからSRLに保管容器が渡されていますが、何らかの理由でこの方法が利用できない場合には、SRLに搭載される小型ヘリコプターを使った回収が行われます。

【▲ サンプル回収用小型ヘリコプターの想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

【▲ サンプル回収用小型ヘリコプターの想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

関連:欧米の火星サンプルリターン計画、サンプル保管容器を回収する小型ヘリ搭載へ

12月21日に投下されたのは、2022年1月31日に採取された火成岩のコアサンプルを収めた保管容器の1つでした。ロボットアーム先端のカメラ「WATSON」で撮影された冒頭の画像には、Perseveranceの車体から約90cm下の地表に転がっている保管容器が写っています。

NASAのジェット推進研究所(JPL)によると、小型ヘリコプターを運用するためには岩などの障害物が少ない直径5.5m以上の平坦なエリアが保管容器1本ごとに必要となるため、10本の保管容器は5~15mの間隔を空けつつ点々と投下されていくことになります。ちなみに、Perseveranceに保管されているサンプルの大半は同じ場所で2本ずつ採取されており、地表には2本のうち1本の保管容器が配置されます。

Advertisements

【▲ サンプル保管容器投下試験の様子】
(Credit: NASA/JPL-Caltech)

2022年12月時点の計画では、ESAが担当する地球帰還用の探査機EROは2027年に、小型ロケットMAVを搭載したNASAの着陸機SRLは2028年に打ち上げられます。Perseveranceが採取した火星表面のサンプルは2033年に地球へ届けられる予定です。

 

Source

  • Image Credit: NASA/JPL-Caltech, ESA, GSFC, MSFC
  • NASA/JPL - NASA’s Perseverance Rover Deposits First Sample on Mars Surface
  • NASA/JPL - NASA’s Perseverance Rover to Begin Building Martian Sample Depot

文/松村武宏

Twitterでフォローしよう