NASA月探査計画「アルテミス1」日本時間9月28日の打ち上げ見送り、熱帯低気圧接近のおそれ
【▲ ケネディ宇宙センター39B射点の「SLS」初号機と、ロールバック開始を待つ大型輸送車両「クローラートランスポーター2」。2022年9月24日撮影(Credit: NASA/Joel Kowsky)】
【▲ ケネディ宇宙センター39B射点の「SLS」初号機と、ロールバック開始を待つ大型輸送車両「クローラートランスポーター2」。2022年9月24日撮影(Credit: NASA/Joel Kowsky)】
【▲ ケネディ宇宙センター39B射点の「SLS」初号機と、ロールバック開始を待つ大型輸送車両「クローラートランスポーター2」。2022年9月24日撮影(Credit: NASA/Joel Kowsky)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、米国フロリダ州のケネディ宇宙センターで日本時間9月28日未明に打ち上げが予定されていた「アルテミス1」ミッションについて、カリブ海を移動中のトロピカルストーム「イアン(Ian)」がフロリダに接近するおそれがあることから、28日の打ち上げを見送ると明らかにしました。

日本気象協会/ALiNKの天気予報専門サイト「tenki.jp」によると、イアンは今後勢力を増してハリケーンに発達する可能性があります。アルテミス1ミッションの次の打ち上げウィンドウは日本時間2022年10月3日3時52分(米国東部夏時間2022年10月2日14時52分)から109分間ですが、NASAは人員と機体の安全を優先して、新型ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」初号機を一旦ロールバック(射点からロケット組立棟まで戻す作業)させるための準備を進めています。

【▲ トロピカルストーム「イアン」の進路予想図。米国東部夏時間2022年9月25日23時時点(Credit: NOAA/NWS)】
【▲ トロピカルストーム「イアン」の進路予想図。米国東部夏時間2022年9月25日23時時点(Credit: NOAA/NWS)】

アルテミス1は、NASAが開発したSLSおよび新型有人宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」の無人飛行試験にあたるミッションです。SLS初号機で打ち上げられたオリオンは月周辺を飛行した後、打ち上げから4~6週間ほど後に地球へ帰還する予定です。なお、SLS初号機には日本の「OMOTENASHI」「EQUULEUS」など10機の小型探査機も相乗りしています。

当初、SLS初号機は日本時間2022年8月29日(米国東部夏時間同日)に打ち上げられる予定でしたが、SLSのコアステージ(第1段)に4基搭載されている液体燃料ロケットエンジン「RS-25」の1基を、始動前の目標温度まで冷却できなかったために延期。続いて日本時間9月4日(米国東部夏時間9月3日)にも打ち上げが試みられたものの、一部の配管で断続的に発生した液体水素漏れを止めることができず、再び延期されていました。日本時間9月21日から22日には水素漏れの修理などを確認するための極低温推進剤充填テストが実施されており、3回目の打ち上げ機会に向けて準備が進められていました。

アルテミス1ミッションに関する新たな情報は、発表があり次第お伝えしていきます。

 

関連:打ち上げ延期されたNASA新型ロケット「SLS」推進剤充填テストを実施

Source

  • Image Credit: NASA/Joel Kowsky
  • NASA - Artemis (NASA Blogs)
  • tenki.jp - ハリケーン フロリダ州へ進む可能性 大西洋におけるハリケーンシーズン遅いスタート

文/松村武宏