米国フロリダ州にあるアメリカ航空宇宙局(NASA)のケネディ宇宙センターでは日本時間8月17日、新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」の初号機を組立棟から射点に移動させる作業「ロールアウト」が行われました。SLS初号機は早ければ2022年8月29日に打ち上げられる予定です。(※NASA新型ロケット「SLS」8月29日の打ち上げは中止)
NASAが開発した新型ロケット「SLS」の初号機は、有人月面探査計画「アルテミス」最初のミッション「アルテミス1」に用いられる機体です。アルテミス1ミッションは、SLSおよびNASAの新型宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」の無人飛行試験にあたります。
ケネディ宇宙センターの39B射点から打ち上げられ、月へ向かう軌道に投入されたオリオンは、月の公転方向に逆行する安定した軌道(DRO:Distant retrograde orbit、遠方逆行軌道)を飛行した後、打ち上げから4~6週間後に地球へ帰還します。なお、SLS初号機には日本で開発された「OMOTENASHI(おもてなし)」と「EQUULEUS(エクレウス)」を含む、10機の超小型衛星(CubeSat)も相乗りしています。
2022年4月と6月には、SLS初号機の打ち上げ前リハーサルにあたる「ウェットドレスリハーサル」が実施されました。本番と同様のタイムラインに沿って約2日間かけて行われるこのリハーサルでは、SLSのコアステージ(第1段)とICPS(第2段、Interim Cryogenic Propulsion Stage)のタンクに推進剤(液体水素と液体酸素)が完全に充填され、打ち上げ直前までの様々な手順を確認。リハーサルを終えたSLS初号機は39B射点からロケット組立棟(VAB)に戻されて、リハーサル時に確認された問題の対策や打ち上げ準備が進められていました。
米国東部夏時間2022年8月16日22時(日本時間8月17日11時)頃、輸送車両「クローラートランスポーター2」(最大積載量8000トン以上)に移動式発射台ごと載せられたSLSはゆっくりと移動を開始。10時間近くが経った米国東部夏時間8月17日7時30分(日本時間同日20時30分)頃、4マイル(6.4km)先にある39B射点に到着しました。
今回のロールアウトは2回行われたリハーサル時に続く3回目で、予定通り進めばSLS初号機がロケット組立棟に戻ることはもうありません。NASAによると、ロールアウト完了時点におけるSLS初号機の打ち上げウィンドウは、米国東部夏時間2022年8月29日8時33分(日本時間同日21時33分)からの2時間です。
なお、アルテミス1の次に予定されているミッション「アルテミス2」(2024年予定)ではまだ着陸は行われませんが、オリオンには実際に宇宙飛行士が搭乗して、月周辺を飛行した後に地球へ帰還します。その次のミッション「アルテミス3」(2025年予定)では、いよいよ半世紀ぶりに人間が月面へ降り立つことになります。歴史的なアルテミス1の打ち上げまであと約10日、ミッションの成功を心から願います。
関連:リハーサルを終えたNASA新型ロケット「SLS」が組立棟に到着。打ち上げ予定は2022年8月下旬以降
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- Image Credit: NASA/Joel Kowsky
- NASA - Artemis I Moon Rocket Arrives at Launch Pad Ahead of Historic Mission
文/松村武宏