NASA超小型衛星「CAPSTONE」通信に問題発生 最初の軌道修正操作を延期
【▲ 月を周回する「CAPSTONE」の想像図(Credit: Illustration by NASA/Daniel Rutter)】
【▲ 月を周回する「CAPSTONE」の想像図(Credit: Illustration by NASA/Daniel Rutter)】
【▲ 月を周回する「CAPSTONE」の想像図(Credit: Illustration by NASA/Daniel Rutter)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は7月5日付で、月を周回する軌道でのテストを予定している超小型衛星「CAPSTONE」との通信に問題が生じていることを明らかにしました。日本時間7月6日昼の時点でCAPSTONEとの通信は途絶えている模様で、運用チームは通信の再確立に取り組んでいます。

CAPSTONEは全長61cm・重量25kgと比較的小さな衛星(CubeSat規格の12Uサイズ、電子レンジくらいの大きさ)で、NASAが建設を計画している月周回有人拠点「ゲートウェイ」が飛行する予定の月長楕円極軌道(NRHO:Near Rectilinear Halo Orbit)での運用テストを行うために打ち上げられました。製造と運用は米国のアドバンスド・スペース(Advanced Space)社が担当しています。

ロケットラボの小型宇宙機「フォトン」に搭載されたCAPSTONEは、6月28日に同社の「エレクトロン」ロケットによって打ち上げられ、フォトンとともに地球周回軌道へ投入されました。フォトンのエンジンを使って徐々に遠地点高度を上げていったCAPSTONEは、打ち上げから6日後に月へ向かう軌道へと入り、日本時間2022年7月4日16時18分にはフォトンからの切り離しにも成功。4か月後の11月13日に月長楕円極軌道へ入る予定とされています。

https://twitter.com/RocketLab/status/1541471794434940929

【▲ 超小型衛星「CAPSTONE」を搭載したロケットラボの「フォトン」(Credit: Rocket Lab)】

NASAやアドバンスド・スペースによると、CAPSTONEはフォトン分離から11時間は正常に運用できていたようです。太陽電池アレイの展開と三軸姿勢制御を達成した後、NASAの深宇宙通信網「ディープスペースネットワーク」(DSN:Deep Space Network)のマドリード局とCAPSTONEの間で通信が行われました。機体の点検と試運転を開始した運用チームは、7月5日に予定されていた最初の軌道修正に備えてCAPSTONEの位置と速度を割り出し、推進システムの試運転も行っています。

ところが、マドリード局に続いてゴールドストーン局との間で行われた通信中に、通信システムで問題が発生したといいます。DSNの通信状況をリアルタイムで表示するNASAのウェブサイト「DSN Now」を参照すると、地上局からCAPSTONEに向けて信号は送られているものの、CAPSTONEから地上局に信号が届いておらず、通信を確立できていない状態が続いている模様です。冒頭でも触れた通り、運用チームは途絶えた通信の再確立に取り組んでいます。

また、通信の問題発生を受けて、7月5日の軌道修正操作は延期されました。NASAによれば、地上局との2回の通信によってCAPSTONEのおおよその位置と速度は割り出されており、必要に応じて軌道修正操作を数日遅らせることができるだけの燃料も搭載されているとのことです。CAPSTONEの状況については新しい情報が入り次第お伝えします。

 

Source

  • Image Credit: NASA/Daniel Rutter
  • NASA - Further Details on Communications Issues with NASA’s CAPSTONE
  • NASA - CAPSTONE Update on Communications Issue
  • Advanced Space - CAPSTONE Mission: 05 July 2022 Update
  • DSN Now

文/松村武宏