アメリカ航空宇宙局(NASA)は6月24日付で、小惑星探査機「Psyche(サイキ)」の打ち上げが延期されたことを明らかにしました。Psycheは2022年8月1日から10月11日までに打ち上げられる予定でしたが、ソフトウェアのテストに費やす十分な時間を確保するため、2022年中の打ち上げは見送られました。
Psycheは火星と木星の間に広がる小惑星帯を公転する小惑星「プシケ」(16 Psyche、最大幅280km)の探査を目的に開発された探査機です。プシケは鉄やニッケルといった金属を豊富に含む「M型小惑星」に分類されていて、その正体は初期の太陽系で形成された原始惑星のコア(核)ではないかと予想されてきました。Psycheはプシケの周回軌道に入り、21か月間に渡って周回探査を行うことが計画されています。
過去に探査機が接近して観測した小惑星や彗星は主に岩石や氷でできていたため、Psycheは金属質の小惑星を間近で観測する初のミッションとなります。地球のコアを直接調べることはできませんが、原始惑星のコアだった可能性があるプシケの観測を通して、地球のような惑星の形成についての貴重な情報が得られると期待されています。
環境試験を終えたPsycheは、2022年5月からケネディ宇宙センターで打ち上げに向けた準備が進められていました。NASAによると、ジェット推進研究所(JPL)のミッションチームが航法誘導制御システムのテストに取り掛かったところ、ソフトウェアをテストするためのテストベッド(試験用の環境やプラットフォームのこと)で問題が見つかりました。問題はすでに修正されていますが、ソフトウェアのテストを10月11日までに完了するには時間が足りなくなってしまったため、2022年中の打ち上げは見送られることになりました。
太陽系内の天体は公転運動によって相対的な位置が常に変化しているため、ある天体へ地球から向かうのに最適なタイミングや飛行に要する期間も変化します。当初の計画では、2022年に打ち上げられたPsycheは2026年にプシケへ到着する予定でした。NASAによれば、Psycheは2023年と2024年にも打ち上げ機会があるものの、プシケに到着するのは2029年あるいは2030年になるといいます。
ただ、現時点ではまだ新たな打ち上げ予定日などは決まっていません。NASA科学ミッション本部副本部長のThomas Zurbuchenさんは「今後の道筋に関する決定は数か月以内に下されるでしょう」とコメントしています。
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- Image Credit: NASA/JPL-Caltech/Arizona State Univ./Space Systems Loral/Peter Rubin
- NASA - NASA Announces Launch Delay for Psyche Asteroid Mission
文/松村武宏