17世紀にガリレオ・ガリレイが発見した4つの衛星「ガリレオ衛星」のひとつ、木星の衛星「エウロパ」。その氷の外殻の下には広大な内部海が存在するのではないかと考えられています。内部海の水量は地球の海水量の2倍に達すると推定されており、そこでは生命が誕生・生息している可能性もあるとして注目されています。
アメリカ航空宇宙局(NASA)は無人探査機によるエウロパの探査ミッション「Europa Clipper(エウロパ・クリッパー)」を計画しており、2022年3月から探査機の組み立てが始まっています。NASAのジェット推進研究所(JPL)は6月7日付で、エウロパ・クリッパーの“本体”となる推進モジュールが完成し、JPLに納入されたことを発表しました。
エウロパ・クリッパーは円筒形の推進モジュールを中心に、カメラ、分光器、レーダー、磁力計といった合計10台の科学観測機器や直径3mの高利得(ハイゲイン)アンテナ、2枚の太陽電池アレイを備えています。打ち上げ後に折りたたみ式の太陽電池アレイが展開されると、探査機の幅は約30mに達します。
本体の推進モジュールはジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所(APL)が設計し、APLとJPLおよびNASAのゴダード宇宙飛行センターが共同で製造を行いました。推進モジュールは全長3m・幅1.5mで、高さ15~23cmのアルミニウムシリンダーを積み重ねて作られています。各種機器を取り付けるためのネジ穴が何百か所も設けられている他に、24基のエンジン、燃料のヒドラジンと酸化剤の四酸化二窒素(合計2750kg)も搭載されます。
完成した推進モジュールはAPLやゴダード宇宙飛行センターがある米国メリーランド州のアンドルーズ空軍基地を5月31日に出発し、カリフォルニア州のマーチ空軍基地を経てJPLのクリーンルームに到着しました。ミッションのプロジェクトマネージャーを務めるJPLのJordan Evansさんは「打ち上げとエウロパ・クリッパーによる科学探査に一歩近付きました」とコメントしています。
エウロパ・クリッパーは2024年10月にスペースXの「ファルコンヘビー」ロケットで打ち上げられ、2030年4月に木星を周回する軌道へと入る予定です。エウロパ・クリッパーは木星を周回しつつエウロパに約50回接近して、内部海などの探査を行うことが計画されています。
関連:木星の衛星エウロパの内部を探るNASA探査機「エウロパ・クリッパー」組み立て開始
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Source
- Image Credit: NASA/JPL-Caltech/Johns Hopkins APL/Ed Whitman
- NASA/JPL - NASA’s Europa Clipper Mission Completes Main Body of the Spacecraft
- Johns Hopkins APL - Johns Hopkins APL Delivers Propulsion Module for NASA Mission to Europa
文/松村武宏